東京都地域結集型研究開発プログラムのタイトル図
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1 基礎編
第1章 VOCの排出と環境等への影響

1.5 規制等

1.5.1 大気汚染防止法による規制

(ア) VOC対策

浮遊粒子状物質(以下「SPM」という)や光化学オキシダントに係る大気汚染の状況が深刻であり、これに緊急に対処することが必要であることから、平成16年5月に大気汚染防止法が改正されました。この法律により、SPM及びオキシダントの生成の原因となる物質であるVOCの排出等を抑制するため、VOC排出施設の届出を義務付けるとともに、当該施設に係る排出基準について定めること及びその他の措置を講ずることとしました。

改正では、大規模の施設に対する法によるVOCの排出規制と中小事業者の自主的な取組との適切な組合せ(ベスト・ミックス)による効果的なVOCの排出抑制という考え方を、初めて法律に位置づけました。ベスト・ミックス方式の推進により、平成22年度までに、工場等の固定発生源からのVOC排出総量を平成12年度比で3割程度抑制することを目標としました1)。更に、平成17 年5月、6月に大気汚染防止法施行令、同施行規則を改正し、また、VOC濃度の測定法を環境省告示で定めました。また、法によるVOCの排出規制が必要なものをVOC排出施設(表1.1.5.1)として定め、VOCの排出規制が平成18 年4月1日より開始されました。

表1.1.5.1 規制対象となるVOC排出施設及び排出基準 (大気汚染防止法第15条の2別表第5の2)
VOC排出施設 規模要件 排出基準
注1) 「送風機の送風能力」が規模の指標となっている施設で、送風機がない場合は、排風機の排風能力を規模の指標とする。
注2) 「乾燥施設」はVOCを蒸発させるためのもの、「洗浄施設」はVOCを洗浄剤として用いるものに限る。
注3) 「ppmC」とは、排出濃度を示す単位で、炭素換算の容量比百万分率である。
揮発性有機化合物を溶剤として使用する化学製品の製造の用に供する乾燥施設 送風機の送風能力が3,000 m³/h以上のもの 600ppmC
塗装施設(吹付塗装に限る。) 排風機の排風能力が100,000 m³/h以上のもの 自動車の製造の用に供するもの 既設700ppmC 新設400ppmC
その他のもの 700ppmC
塗装の用に供する乾燥施設(吹付塗装及び電着塗装に係るものを除く。) 送風機の送風能力が10,000 m³/h以上のもの 木材・木製品(家具を含む。)の製造の用に供するもの 1,000ppmC
その他のもの 600ppmC
印刷回路用銅張積層板、粘着テープ・粘着シート、はく離紙又は包装材料(合成樹脂を積層するものに限る。)の製造に係る接着の用に供する乾燥施設 送風機の送風能力が5,000 m³/h以上のもの 1,400ppmC
接着の用に供する乾燥施設(前項に掲げるもの及び木材・木製品(家具を含む。)の製造の用に供するものを除く。) 送風機の送風能力が15,000 m³/h以上のもの 1,400ppmC
印刷の用に供する乾燥施設(オフセット輪転印刷に係るものに限る。) 送風機の送風能力が7,000 m³/h以上のもの 400ppmC
印刷の用に供する乾燥施設(グラビア印刷に係るものに限る。) 送風機の送風能力が27,000 m³/h以上のもの 700ppmC
工業製品の洗浄施設(乾燥施設を含む。) 洗浄剤が空気に接する面の面積が5 m²以上のもの 400ppmC
ガソリン、原油、ナフサその他の温度37.8 ℃において蒸気圧が20 kPaを超える揮発性有機化合物の貯蔵タンク(密閉式及び浮屋根式(内部浮屋根式を含む)のものを除く。) 1,000 kL以上のもの(ただし、既設の貯蔵タンクは、容量が2,000 kL以上のものについて排出基準を適用する。) 60,000ppmC

(イ) 有害大気汚染物質対策

有害大気汚染物質(HAPS)は、「継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある物質で大気の汚染の原因となるもの(ばい煙及び特定粉じんを除く。)」とされています。1996年に中央環境審議会大気環境部会「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第二次答申)」2)により、HAPSに該当する234物質のリストとリスクレベルが高く、優先的に対策に取り組むべき物質(優先取組物質)を22種類リストアップしました。該当する物質については見直しが行われ、2010年10月18日には、同第九次答申3)により、HAPSに該当するものは248物質に、優先取組物質は、23物質に改定されています(表1.1.5.2)。VOCに該当する物質も多く含まれており、トルエンは新たに指定されました。

このうち、早急に排出抑制を行わなければならない物質(指定物質)として、平成9年2月6日、指定物質抑制基準が告示され(大気汚染防止法附則第9項の規定に基づく指定物質抑制基準、環境庁告示5号(新設基準)、同6号(既設基準))、ベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンの3物質が指定され、それぞれ指定物質抑制基準が定められています(表1.1.5.3)。

表1.1.5.2 優先取組物質
物質名 VOC
1 アクリロニトリル
2 アセトアルデヒド
3 塩化ビニルモノマー
4 塩化メチル
5 クロム及び三価クロム化合物
6 六価クロム化合物
7 クロロホルム
8 酸化エチレン
9 1,2-ジクロロエタン
10 ジクロロメタン
11 水銀及びその化合物
12 ダイオキシン類
13 テトラクロロエチレン
14 トリクロロエチレン
15 トルエン
16 ニッケル化合物
17 ヒ素及びその化合物
18 1,3-ブタジエン
19 ベリリウム及びその化合物
20 ベンゼン
21 ベンゾ(a)ピレン
22 ホルムアルデヒド
23 マンガン及びその化合物
表1.1.5.3 指定物質排出施設及び指定物質抑制基準 (大気汚染防止法附則第9項)
指定物質排出施設 指定物質抑制基準の概要
ベンゼン(濃度が体積百分率60%以上のものに限る。以下同じ。)を蒸発させるための乾燥施設であって、送風機の送風能力が1時間当たり1,000 m³以上のもの 溶媒として使用したベンゼンを蒸発させるためのものに限定。
既設 200 mg/m³N 排ガス量 1,000 m³/h以上3,000 m³/h未満
100 mg/m³N 排ガス量 3,000 m³/h以上
新設 100 mg/m³N 排ガス量 1,000 m³/h以上3,000 m³/h未満
50 mg/m³N 排ガス量 3,000 m³/h以上
原料の処理能力が1日当たり20トン以上のコークス炉 装炭時の装炭口からの排出ガスで装炭車集じん機の排出口から排出されるものに対して適用。
既設 100 mg/m³N 特殊構造炉の適用除外あり
新設 100 mg/m³N
ベンゼンの回収の用に供する蒸留施設(常圧蒸留施設を除く。) 溶媒として使用したベンゼンの回収の用に供するものに限定。
既設 200 mg/m³N 排ガス量 1,000 m³/h以上
新設 100 mg/m³N 排ガス量 1,000 m³/h以上
ベンゼンの製造の用に供する脱アルキル反応施設(密閉式のものを除く。) フレアスタックで処理するものを除外
既設 100 mg/m³N
新設 50 mg/m³N
ベンゼンの貯蔵タンクであって、容量が500 kL以上のもの 浮屋根式のものを除外。また、基準はベンゼンの注入時の排出ガスに対して適用。
既設 1,500 mg/m³N 容量 1,000 kL 以上
新設 600 mg/m³N
ベンゼンを原料として使用する反応施設であって、ベンゼンの処理能力が1時間当たり1トン以上のもの(密閉式のものを除く。) フレアスタックで処理するものを除外。
既設 200 mg/m³N 排ガス量 1,000 m³/h以上3,000 m³/h未満
100 mg/m³N 排ガス量 3,000 m³/h以上
新設 100 mg/m³N 排ガス量 1,000 m³/h以上3,000 m³/h未満
50 mg/m³N 排ガス量 3,000 m³/h以上
トリクロロエチレン又はテトラクロロエチレン(以下「トリクロロエチレン等」という。)を蒸発させるための乾燥施設であって、送風機の送風能力が1時間当たり1,000 m³以上のもの 溶媒として使用したトリクロロエチレン等を蒸発させるためのものに限定。
既設 500 mg/m³N
新設 300 mg/m³N
トリクロロエチレン等の混合施設であって混合槽の容量が5 kL以上のもの(密閉式のものを除く。) 溶媒としてトリクロロエチレン等を使用するものに限定。
既設 500 mg/m³N
新設 300 mg/m³N
トリクロロエチレン等の精製又は回収の用に供する蒸留施設(密閉式のものを除く。) トリクロロエチレン等の精製の用に供するもの及び原料として使用したトリクロロエチレン等の回収の用に供するものに限定。
既設 300 mg/m³N
新設 150 mg/m³N
トリクロロエチレン等による洗浄施設(次号に掲げるものを除く。)であって、トリクロロエチレン等が空気に接する面の面積が3 m²以上のもの 既設 500 mg/m³N
新設 300 mg/m³N
十一 テトラクロロエチレンによるドライクリーニング機であって、処理能力が1回当たり30 kg以上のもの 密閉式のものを除外。
既設 500 mg/m³N
新設 300 mg/m³N

1.5.2 悪臭防止法による悪臭物質規制

悪臭防止法は1971年に制定され、22種の特定悪臭物質に対して臭気強度による規制が定められました(表1.1.5.4)。悪臭物質には、VOCに該当する物質が多く含まれています。しかし、個別の物質の規制では複合臭の問題に対処できないことを勘案して、1996年に臭気指数による規制が制定されました。これは嗅覚に基づいた悪臭原因物質の評価方法であり、悪臭物質の総量での規制といえます。

表1.1.5.4 特定悪臭物質 (悪臭防止法施行規則別表第一を改作)
No. 名称 ppm*
*臭気強度として3(規制基準の中央値)を与える物質濃度(ppm)
1 アンモニア 2
2 メチルメルカプタン 0.004
3 硫化水素 0.06
4 硫化メチル 0.05
5 二硫化メチル 0.03
6 トリメチルアミン 0.03
7 アセトアルデヒド 0.1
8 プロピオンアルデヒド 0.1
9 ノルマルブチルアルデヒド 0.03
10 イソブチルアルデヒド 0.07
11 ノルマルバレルアルデヒド 0.02
12 イソバレルアルデヒド 0.006
13 イソブタノール 4
14 酢酸エチル 7
15 メチルイソブチルケトン 3
16 トルエン 30
17 スチレン 0.8
18 キシレン(o,m,p 混合物) 2
19 プロピオン酸 0.07
20 ノルマル酪酸 0.002
21 ノルマル吉草酸 0.002
22 イソ吉草酸 0.004

1.5.3 化学物質排出把握管理促進法による指定化学物質規制

特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化学物質排出把握管理促進法)では、人の健康を損なうおそれ(発がん性、変異原性、感作性など)又は動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれ(生態毒性)があるもので、環境中に存在すると考えられる量の違いによって、第一種指定化学物質(462種類)と第二種指定化学物質(100種類)の2つに区分し、指定しています。

PRTR制度の届出の対象となるのは、第一種指定化学物質で、このうち、人に対する発がん性があると評価されている物質を特定第一種指定化学物質と呼び、15種類を指定しています(表1.1.5.5)。第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質を他の事業者へ出荷する場合には、有害性に関する情報や取扱い方法などを記載したMSDS(化学物質等安全データシート)を提供することを事業者に義務づけています。特定第一種指定化学物質には、VOCに該当するエチレンオキシド(酸化エチレン)、1,3-ブタジエン、2-ブロモプロパン、ベンゼン、ホルムアルデヒドが含まれています。

表1.1.5.5 第1種指定化学物質及び特定第1種指定化学物質
(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律第2条、同施行令別表第一及び別表第2)
第一種指定化学物質 次のいずれかの有害性の条件に当てはまり、かつ、環境中に広く継続的に存在するもの 462種類
○人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがあるもの
○その物質自体は人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息もしくは生育に支障を及ぼすおそれがなくても、環境中に排出された後で化学変化を起こし、容易に上記の有害な化学物質を生成するもの
○オゾン層を破壊するおそれがあるもの
特定第一種指定化学物質 人に対する発がん性があると評価されているもの 15種類
石綿、エチレンオキシド、カドミウム及びその化合物、六価クロム化合物、塩化ビニル、ダイオキシン類、鉛化合物、ニッケル化合物、砒素及びその無機化合物、1,3-ブタジエン、2-ブロモプロパン、ベリリウム及びその化合物、ベンジリジン=トリクロリド、ベンゼン、ホルムアルデヒド

1.5.4 東京都環境確保条例による有害ガス規制

東京都環境確保条例第2条11号により、有害ガスとは「人の健康に障害を及ぼす物質のうち気体状又は微粒子状物質(ばい煙を除く。)」とされています。有害ガスには、VOCに該当する物質が多く含まれており、同条例第68条別表第7第3号により、排出口濃度における規制基準値が定められています(表1.1.5.6)。

表1.1.5.6 有害ガス (東京都環境確保条例第68条別表第7第3号)
番号 有害ガスの種類 規制基準値(mg/m³N) VOC
1 弗(ふっ)素及びその化合物 9 (一部)
2 シアン化水素 6
3 ホルムアルデヒド 70
4 塩化水素 40
5 アクロレイン 10
6 塩素 30
7 臭素及びその化合物 70 (一部)
7-2 臭化メチル 200
8 窒素酸化物 200
9 フェノール 200
10 硫酸(三酸化硫黄を含む。) 1
11 クロム化合物 0.25
12 塩化スルホン酸 1
13 ピリジン 40
14 スチレン 200
15 エチレン 300
16 二硫化炭素 100
17 クロルピクリン 40
18 ジクロロメタン 200
19 1,2-ジクロロエタン 200
20 クロロホルム 200
21 塩化ビニルモノマー 100
22 酸化エチレン 90
23 砒(ひ)素及びその化合物 0.05
24 マンガン及びその化合物 0.05
25 ニッケル及びその化合物 0.05
26 カドミウム及びその化合物 1
27 鉛及びその化合物 10
28 メタノール - これらの物質の合計が800

ただし、ベンゼン100、トリクロロエチレン300、テトラクロロエチレン300、メチルイソブチルケトン200、トルエン200、ヘキサン200以上含まれないこと
29 イソアミルアルコール
30 イソプロピルアルコール
31 アセトン
32 メチルエチルケトン
33 メチルイソブチルケトン 200
34 ベンゼン 100
35 トルエン 200
36 キシレン
37 トリクロロエチレン 300
38 テトラクロロエチレン 300
39 酢酸メチル
40 酢酸エチル
41 酢酸ブチル
42 ヘキサン 200

引用文献

  1. 環境省、「揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制制度の概要」、環境省ホームページ、http://www.env.go.jp/air/osen/voc/seido/001.pdf、2011/06/06確認
  2. 環境省 報道発表資料、「中央環境審議会大気環境部会「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第二次答申)」について」(平成8年10月17日)
  3. 環境省 報道発表資料、「中央環境審議会大気環境部会「今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第九次答申)」について(お知らせ)」(平成22年10月18日)、http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=13040
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