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1 基礎編
第2章 VOCの処理技術

本章では、気体中のVOCを処理する技術について、実用化されているものを中心にして、種類と特徴、利用の際に必要となる知識について述べます。

2.1 処理技術の種類

2.1.1 処理技術の分類

表1.2.1.1に処理技術の種類と概要を示します。VOCの処理技術は、大別して、a.燃焼法、b.吸着法、及びc.その他の方法、があります。

  1. 燃焼法は、VOC中の炭素を酸化してCO2にまで分解して処理する方法で、工場の排ガス処理などに多く利用されています。燃焼法を更に分類すると直接燃焼法、蓄熱燃焼法、触媒燃焼法があります。同じ酸化処理をするので、光触媒をこの中に入れる分類法もありますが、本章では光触媒はその他の方法に分類しました。
  2. 吸着法は、VOCを物理的に吸着して捕集する方法です。吸着材には、活性炭、ゼオライト、シリカなどが使用されています。通常はVOCの吸着と脱着を繰り返して、吸着材を再生しながら使用します。
  3. その他の方法として、光触媒、放電プラズマ、オゾン酸化、生物処理、薬液処理などがあります。光触媒は脱臭、抗菌などに多く使用されています。放電プラズマ、オゾン酸化、生物処理、薬液処理については、それぞれ特定の用途に向けた開発が進められています。

2.1.2 ガスの種類と処理技術

(社)産業環境管理協会が作成した「有害大気汚染物質対策の経済性評価報告書」*注)では、ニッケル化合物を除く自主管理物質の11物質を性質の違いから4群に分けています(表1.2.1.2)。

*注) 経済産業省の依託で(社)産業環境管理協会が実施した、VOC処理技術の調査結果をまとめたものが「有害大気汚染物質対策の経済性評価報告書」(2003年2月)です。この報告書は、34団体約330社へのアンケート調査がもとになっています。調査に協力した団体は化学、材料、製薬などの製造業が中心です。

この報告書では、Ⅰ群はベンゼン、1,3-ブタジエン、アクリロニトリルで、発熱量が高く自燃しやすい物質です。Ⅱ群はホルムアルデヒド、アセトアルデヒドで、乾燥炉などから発生し悪臭が強い水溶性の物質です。Ⅲ群はトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルムで、洗浄に使用されていて、水や土壌汚染で問題になる塩素を含んだ物質です。Ⅳ群は塩ビモノマー(VCM)、1,2-ジクロロエタンで、塩ビ製造工程で発生する物質です。

物質群ごとの処理技術を図1.2.1.1に示しますが、Ⅰ群では焼却加熱(燃焼)、Ⅱ群では水・酸・アルカリ吸収、Ⅲ群では活性炭等吸着処理が多く使用されています。

処理技術は日々進歩をしており、また報告書が作成された2003年当時は顕在化していなかった、CO2削減を求める強い社会的要請もあるので、ガスの種類と処理技術の関係は、大きく変化していくと思われます。

表1.2.1.1 VOC処理技術の種類と概要
分類 原理 主な用途 特長 課題
燃焼法 直接燃焼 VOCを直接燃焼させて酸化 塗装、印刷、化学プラントなど 実績大(装置安価・保守容易)、VOCの種類不問 (燃焼温度750~850℃程度) 低濃度の場合は補助燃料費大、補助燃料による多量のCO2排出、燃焼に伴う2次汚染防止対策必要
蓄熱燃焼 蓄熱体(セラミックス)に熱を蓄えて燃焼 塗装、印刷、化学プラントなど 熱効率良好(90~95%)、自燃濃度が低い(VOCの種類により500ppm程度から自燃) 装置が高価で重い、断続運転は不適、ヤニ・タール、シリコンなど処理必要、(蓄熱材が目詰り)
触媒燃焼 熱触媒を使用して低温で酸化 印刷、化学プラントなど 低温燃焼可能(350~450℃程度)、低NOx発生、保守容易 シリコン、リン、硫黄などで触媒が被毒し失活
吸着法 活性炭(破砕状、繊維状、粒状、ハニカム成型品など) 吸着と脱着。脱着は、昇温、減圧、水蒸気の吹き付けなどで行う 化学プラント、洗浄、ビル・クリーンルームの空調など VOCを回収して再利用が可能、捕集(吸着)時エネルギー不要、処理に伴う中間生成物発生なし 再生コスト、吸着材の劣化、脱着時にVOCが一部残留、可燃性で特にケトン類で発火が報告されている
無機系吸着材(ゼオライト、シリカなど) 吸着と脱着。脱着は、昇温、減圧など 化学プラント、ガソリンベーパーバックなど VOCを回収して再利用が可能、不燃性、処理に伴う中間生成物の発生なし 活性炭に比較して、同等の表面積でコスト高
高分子吸着材 吸着と脱着。脱着は、昇温、減圧など 現在、国内では実施例不明(移動床方式による吸着) 形状が均一、摩耗粉が出ない、湿度に影響され難い VOCの種類により吸着性能が大きく異なる
光触媒 紫外線+光触媒(酸化チタン、酸化タングステンなど) 室内空気浄化、水処理、畜産物死骸保管倉庫等の脱臭 低ランニングコスト、保守容易、常温処理、(可視光利用が研究されている) 処理速度遅い、分解するVOCの量が少ない場合だけ使用可能(においの処理など)
放電プラズマ法 プラズマによる酸化。触媒との組合せが工夫されている 小売店の脱臭、家庭用空気清浄機 分解率が高い、省エネルギー、常温処理 空気中の放電はNOx発生のおそれがある、排気中の二次生成物に注意が必要
オゾン酸化法 オゾンによる酸化 水処理で実用化、気体用は開発進行中 省エネルギー、保守が容易、常温処理 処理物質が限定される、排気中のオゾンを処理する必要がある
生物処理法 微生物・細菌などによる分解 畜産の悪臭、(国外では工場排気処理にも利用) 省エネルギー、保守が容易、常温処理、排気の再処理不要 処理速度が遅い、設備が大きく水の補給が必要
薬液処理法 水、酸・アルカリ、合成油などによる吸収及び分解 特定化学物質の回収、悪臭防止、効率的な液体への吸収方法など開発中 装置は小型・低コスト可能 特定化学物質の場合は効率的、薬液管理と廃液処理がコスト要因
表1.2.1.2 ガスの性質による4物質群分類
(転載:経済産業省,(社)産業環境管理協会、「有害大気汚染物質対策の経済性評価報告書」、2003年2月、p. 13、表2.5)
群・事例数 物質名 分類理由
Ⅰ群
246事例
① ベンゼン
② 1,3-ブタジエン
③ アクリロニトリル
発熱量が高く、焼却して熱回収に向く(注:高濃度の場合)一般有機化合物
Ⅱ群
82事例
④ ホルムアルデヒド
⑤ アセトアルデヒド
水溶性の高いアルデヒド類
Ⅲ群
318事例
⑥ トリクロロエチレン
⑦ テトラクロロエチレン(パークロロエチレン)
⑧ ジクロロメタン(塩化メチレン)
⑨ クロロホルム
Ⅳ群を除く塩素化合物
Ⅳ群
94事例
⑩ 塩ビモノマー(VCM)
⑪ 1,2-ジクロロエタン(EDC)
塩ビの製造工程に係る物質

図1.2.1.1 物質群別の処理設備の適用割合
(転載:経済産業省,(社)産業環境管理協会、「有害大気汚染物質対策の経済性評価報告書」、2003年2月、p.26、図2-7b)

コラム:
室内でも大気汚染?!

大気環境で光化学オキシダントとは、VOCと窒素酸化物の混合系に太陽光線が作用することにより生成した含酸素物質やオゾンを指します。ここで生成したオゾンは、さらに他のVOCと反応して新たな二次酸化生成物を生成し、一部の物質は、蒸気圧が低いため凝集して粒子を生成します。さて、このオゾンと有機化合物の反応ですが、室内においても同様のメカニズムで起こっている可能性があります。

最近、酸化分解によって有機化合物を分解するタイプの空気清浄機をよく見かけますが、その多くが直接または間接的にオゾンによる酸化分解を利用しています。有機化合物が二酸化炭素と水にまで完全分解されてしまえば問題はないのですが、大抵は完全分解に至らず、大気環境と同じように二次酸化生成物つまり光化学オキシダントや微小粒子を生じると考えられています。実験室レベルでは、木材から発生するα-ピネンなどのテルペン類がオゾンと反応すると高分子量の有機化合物や微小粒子を生成することが確認されています。これらの物質の健康影響は明らかではありませんが、大気環境において光化学オキシダントが目や呼吸器に影響を与えることが分かっているので、少し心配になります。

濃度の違いは大きいですが、事業所におけるVOC処理技術を考える時と同じように、室内における空気清浄についても、出口ガスの成分も含めた総合的な評価を行うことが必要だと言えるでしょう。

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