東京都地域結集型研究開発プログラムのタイトル図
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1 基礎編
第2章 VOCの処理技術

2.3 吸着法による処理

VOCを物理的に吸着して捕集する処理方法です。吸着材として活性炭ゼオライトシリカなどが使用されています。

吸着材の孔はその大きさから、直径2 nm以下をマイクロ孔(ミクロ孔)、2~50 nmをメソ孔、それ以上をマクロ孔と呼んでいます。吸着材の比表面積を大きくし、VOCを素早く吸着するのはマイクロ孔です。一方、水蒸気を多量に蓄え湿度を一定に保つ用途などにはメソ孔やマクロ孔が有効です。ガスを吸着材内部まで速やかに運ぶためにはマクロ孔が有効と言われています。一般に、活性炭はマイクロ孔からマクロ孔まで様々な径の孔を持っています。一方、ゼオライトはサイズの揃ったマイクロ孔を持っています。

工場などで多量にVOCが出る場合、高価で単一のVOCの場合は脱着後に回収されています。しかし、安価で多種のVOCが混合されている場合は、分離精製などに費用がかかるので、脱着後に廃棄されます。

2.3.1 活性炭

活性炭は、吸着材として最も多く使用されています。活性炭は、他の吸着材に比較して安価で、高い比表面積を有する利点があります。各種VOCに対する活性炭の保持量を表1.2.3.1に示します。

活性炭の原料は、ヤシガラ、石炭(瀝青炭、無煙炭)、オイルピッチ、木材チップ、おが屑、コーヒー滓、レーヨン、アクリルニトリル、フェノール樹脂などがあります。形状は、粒状、破砕状、粉末状、繊維状、成型(ハニカム状)などがあります。活性炭の表面は基本的に疎水性です。しかし、酸処理などにより表面に酸化物をつくり、親水性を持たせることも可能です。

活性炭は原料、形状、製造方などにより、それぞれ特徴があり用途も異なります。気相のVOCを吸着する場合は、一般的に以下のようなものが使用されています。

原料: ヤシガラ活性炭、石炭原料活性炭が多く使用されています。
形状:
  • 粒状及び破砕状の活性炭が多く使用されています。装置に組み込むときは、圧力損失が大きくなり過ぎないためと、活性炭が擦れて生じる粉が飛ばないようにするために、一般的には線速度0.5 m/s以下で使用されます。
  • 繊維状活性炭は、吸脱着を頻繁に繰り返す濃縮機などの用途に使用されています。繊維系は数~20 µm程度で、原料はフェノール、PAN、ピッチ、レーヨン系などがあります。
  • ハニカム状は、クリーンルームの空調など濃度が低い用途に使用されています。
  • 粉末状は圧力損失が大きく、飛散しやすいので気体用にはあまり使用されません。
性能: 気体浄化用の活性炭の比表面積は800~1,500 m²/g程度が一般的です。(粉末活性炭では比表面積が大きいものもあります。)
表1.2.3.1 VOCおよび悪臭物質の活性炭による吸着保持量
(転載:中津山憲、「塗装工程における臭気発生の現状と臭気対策」、塗装技術、45 (9)、2006、pp.72-78)
番号 物質名 分子式 活性炭保持量
(重量%)
分子量 沸点
(℃)
1 ホルムアルデヒド CH2O 僅少 30.0 -19.2
2 メタノール(メチルアルコール) CH4O 2.2 32.0 64.7
3 イソプロピルアルコール C3H80 15.8 60.1 82.4
4 アセトン C3H6O 7.2 58.1 56.3
5 メチルエチルケトン C4H6O 10 72.1 79.6
6 メチルイソブチルケトン C6H12O 20 100.2 115.8
7 ベンゼン C6H6 23 78.1 80.1
8 トルエン C7H8 25 92.1 110.8
9 キシレン C8H10 26 106.2 139
10 トリクロロエチレン C2HCl3 13 131.4 87.2
11 テトラクロロエチレン C2Cl4 60 165.9 121.2
12 ピリジン C5H5N 25 79.1 115.4
13 酢酸メチル C3H6O2 16 74.1 56.3
14 酢酸エチル C4H8O2 19 88.1 76.8
15 酢酸ブチル C6H12O2 28 116.2 126.3
16 ヘキサン C6H14 10.6 86.2 68.8
17 スチレン C8H8 22 104.2 145.8
18 ジクロロメタン CH2Cl2 3.2 84.9 39.8
19 1, 2-ジクロロエタン C2H4Cl2 8.5 99.0 83.7
20 塩化ビニルモノマ C2H3Cl 40 62.5 -13.9

2.3.2 無機系吸着材

無機系吸着材としては、ゼオライトとシリカが使用されています。活性炭と比較すると、高価ですが、不燃性で脱着時に高温にすることが可能です。また、一般的には、脱着後に残留するVOCの量が活性炭の場合より少なくなります。

ゼオライト
ゼオライトは結晶性のアルミノケイ酸塩で、触媒、吸着材として化学分野、環境分野で広く利用されています。VOC処理関係では、比表面積が活性炭と同等のものをつくることが出来て、繰返しの使用に耐えるので、VOCの濃縮装置に使用されています。また、ゼオライトは細孔経が均一で、その特徴を活かして特定のガスだけを選択して吸着させることが可能です(活性炭でも製法によっては酸素と窒素を分離吸着可能なものなどが製造できます)。
シリカ
吸着材としては、ケイ酸をゲル化したシリカゲルの形で使用されています。本来は親水性で水蒸気の吸着能力に優れており、乾燥材として広く使用されています。現在、大気浄化材料としては、消臭材として使用されています。また、VOC処理に関しては、ガソリン蒸気の吸着回収用などに使用されています。
メソ細孔径を揃えたメソポーラスシリカが合成可能なことが知られていますが、本プロジェクトでは、細孔経を更に小さく制御して、マイクロ孔を持つマイクロポーラスシリカの開発に成功しました。まだ、製造コストが高額ですが、大きなSV値でも優れた吸着性能を示しているので、将来は有望な吸着材です。
アパタイト
アパタイト(apatite)はリン酸塩鉱物の一種で、動物の骨や貝殻の成分でもあり、親水性でリンなどの吸着に優れています。自然のアパタイトの比表面積を100 m²/g以上に加工することは困難で、現在は、気中のVOC浄化用にはあまり使用されていません。しかし、脱臭用などに、今後は利用される可能性があります。

2.3.3 その他の吸着材

高分子のVOC吸着材は、スチレン(PS)-ジビニルベンゼン(DVB)共重合物で製造されるGC分離剤やイオン交換樹脂の発展として開発されました。多くの樹脂系吸着材は疎水性であり、気相のVOC吸着のほか汚染地下水などに含まれるジクロロエタン、トリハロメタンなどの吸着に使用されています。

高分子吸着材を使用した気中のVOC処理装置としては、スウェーデンのChematur Engineering AB 社のPOLYADプロセス技術が有名で、我が国でも主として塗装工場におけるVOC、溶剤ガス処理装置として技術導入され製造販売されました(1999年)。吸着塔は高分子吸着材(Bonopore 1120)を充填した流動床方式*注であり、吸着材は脱着塔で加熱再生され、吸着塔に循環されます。現在は、国内では製造されていません。

*注:流動床(fluid bed)とは、吸着と脱着のために吸着材そのものを流すように動かす方式で、吸着材には擦れても破損しないなどの性質が必要です。それに対して、固定床(fixed bed)では、吸着材は床(bed)に固定されて使用されます。

高分子吸着材として、活性炭の代わりに使用することを目的に開発されたのが、The Dow Chemical CompanyのDOWEX™ OPTIPORE™シリーズです。これは現在も入手可能であり、そのうちの3種類の特性を表1.2.3.2に示します。

表1.2.3.2 DOWEX™ OPTIPORE™ポリマー吸着材の特性例
(転載: The Dow Chemical Company, “Dow Water & Process Solutions”, http://www.dowwaterandprocess.com/, 2011/6/3確認)
名称 BET比表面積
(m²/g)
密度
(g/cc)
メッシュ又は粒径 クラッシュ強さ(g/粒) 有孔率(cc/g) 平均孔サイズ(A) 用途
V493 >1100 0.34 20/50 >500 1.16 46 気体、流動床
V503 >1100 0.34 1000 μm >1000 0.94 34 気体、固定床
V493 >1100 0.62 20/50 >500 1.16 46 液体
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