東京都地域結集型研究開発プログラムのタイトル図
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1 基礎編
第2章 VOCの処理技術

2.5 処理装置導入のコスト

処理装置の導入を検討する場合、まず必要なのがコストの見積もりです。ここでは処理装置導入に係る費用の概要について述べ、具体的な装置例については、2塗装編の第5章「塗装工場用VOC処理装置」を参照してください。

2.5.1 イニシャルコストとランニングコスト

まず始めに断らなければいけないのは、処理装置導入とランニングコストの見積もり及び比較は非常に難しいと言うことです。

イニシャルコスト
装置は単体で運転されることはなくて、熱回収システムや配管などの付帯工事が必要になります。それらをどこまで含めるかでコストは大きく異なります。また、そうした設備状況はランニングコストに影響します。
ランニングコスト
燃焼法の装置ではVOC濃度が高ければ補助燃料費がゼロになります。触媒を使用した場合には、シリコンなどの被毒物質が排ガス中に含まれる量によって触媒の寿命が異なります。また、吸着法ではVOC濃度が低ければ、吸着材が破過するまでの時間が長くなり、吸着・脱着に必要な再生処理コストが小さくなります。

したがって、処理対象とするVOCの種類、VOC濃度、一日の運転時間、処理効率などを一定にしないと数値だけの比較は無意味です。

以上の議論を踏まえた上で、「VOC排出削減支援ツール」*注上で公開されているイニシャルコストとランニングコストを表1.2.5.1に示します。それをグラフ化したものが図1.2.5.1です。図1.2.5.1の中で株式会社モリカワの冷却凝集法は吸着法に含めました。また、同じ企業の同じ製品シリーズに複数の装置がある場合は、処理風量が最小ものと最大のものだけを取り上げました。更に、処理風量とコストが「△~○」と記載してあるものは最大の「○」の数値を採用しました。

*注:「VOC排出削減支援ツール」は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託により開発され、VOC削減技術に関する情報を集めてインターネット上に公開したものです(http://www.voc-info.jp/、ただし、2011/6/3現在休止中です)。開発担当は(株)三菱化学テクノリサーチ、(株)三菱総合研究所、みずほ情報総研(株)、(独)産業技術総合研究所の4社で、開発研究の統括は東京大学生産技術研究所が行ったものです。

表1.2.5.1  処理装置のイニシャルコストとランニングコスト
((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、「VOC排出削減支援ツール」、http://www.voc-info.jp/(2011/02/10確認)より抜粋)
番号 企業名 製品名 最大処理風量(m³/min) イニシャルコスト(百万円) ランニングコスト(千円/月) 装置面積(m²) 処理方式
1 アマノ(株) VRT-290(ゼオライトフィルター付) 290 15 253 6.34 触媒燃焼
2 有アマリ精工 AK-0130PP 13 7.8 34 2 触媒燃焼
3 有アマリ精工 AK-0015PP 1.5 2.45 3 0.59 触媒燃焼
4 (株)環境プラント技研 リンクル 1000 16 300 10 粒状活性炭
5 東洋紡績(株) Kフィルター溶剤吸着処理装置 2RG-2 30 15 18.68 3.25 繊維状活性炭
6 東洋紡績(株) Kマットロール脱臭装置 KR-50 50 9.8 27.4 1.53 触媒燃焼
7 パナソニック環境エンジニアリング 触媒酸化設備 2000 200 500 200 触媒燃焼
8 パナソニック環境エンジニアリング 触媒酸化設備 1 5 10 1 触媒燃焼
9 大和化学工業(株) 溶剤回収装置Take-10L 10 7 24 3.6 粒状活性炭
10 大和化学工業(株) 溶剤回収装置Take-100 60 30 210 12 粒状活性炭
11 (株)モリカワ REARTH S150
(圧縮深冷凝縮方式)
10 7.4 20 0.957 冷却凝集
12 (株)モリカワ REARTH S500
(圧縮深冷凝縮方式)
100 12.3 50 1.52 冷却凝集
13 (株)モリカワ REARTH SV
(活性炭吸着方式)
100 120 200 100 粒状活性炭
14 (株)モリカワ REARTH RV
(活性炭吸着・交換方式)
100 3 300 6 吸着材交換方式
15 (株)西部技研 スカイセーブS 60 14.5 50 3.5 触媒燃焼

図1.2.5.1 市販処理装置のイニシャルコスト(単位100万円)とランニングコスト(単位1千円/月)の企業発表値
((独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、「VOC排出削減支援ツール」、http://www.voc-info.jp/(2011/02/10確認)より数値引用)


2.5.2 VOC濃度による処理費用の違い

VOCの処理コストは方式や濃度によっても大きく異なります。大風量、低濃度のVOCを発生する場所が、塗装ブース、グラビア印刷、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics, FRP)の製造・加工現場などにあります。FRPの製造・加工で発生するVOCは主にスチレンで(Styrene: C6H5C2H3、分子量104、沸点145℃)、塗装の多く使用される溶剤であるトルエン(Toluene: C6H5CH3、分子量92、沸点111℃)と似た性質を持っています。United States Environmental Protection Agencyのレポートが大風量低濃度スチレンの処理コストを報告しています1)

その報告から作成した年間20トン処理した場合のスチレン濃度1 kg当たりの回収コストを図1.2.5.2に示します。縦軸の処理コストは1ドル90円で円に換算したものです。濃度が低くなるとkg当たりの処理費用が急激に上昇することが分かります。中小塗装工場の塗装ブースの排気中のVOCは、本プログラムで実施した工場調査ではトルエン換算で平均38ppm(全炭素量で266ppmC)でしたので、この図の曲線には乗らないほど低濃度で濃度ゼロの近傍です。更に、中小企業の塗装ブース1台の年間VOC処理量は、このグラフの1/10である2トン/年程度なので単位重量当たりの処理コストはより高くなります。処理コストを下げるためには、塗装、FRP製造、グラビア印刷などの工場では、VOC処理装置の前段に濃縮装置を付けることを検討すべきでしょう。VOC濃縮装置は高額ですが、処理風量を1/5~1/20に減少させることができます。

図1.2.5.2 スチレンの濃度と回収コスト(年間20トン排出を仮定)
(引用:United States Environmental Protection Agency, “Assessment of Styrene Emission Controls for FRP/C and Boat Building Industries”, National Risk Management Research Laboratory, EPA-600/R-96-106, September (1996))

引用文献

  1. United States Environmental Protection Agency, “Assessment of Styrene Emission Controls for FRP/C and Boat Building Industries” , National Risk Management Research Laboratory, EPA-600/R-96-106, September (1996)
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