東京都地域結集型研究開発プログラムのタイトル図
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1 基礎編
第3章 VOCおよび関連項目の測定方法

3.3 大気環境における測定

大気環境には、排出口や作業環境から排出されたVOC等が存在しますので、それらの測定方法は、基本的にはこれまで記載した方法と同じです。ただし、大気で希釈されて濃度が低くなるため、低濃度でも測定できる測定法が必要となります。また、大気化学反応により光化学オキシダントSPMが生成するため、これらの測定も必要です。

大気環境においては、大気汚染防止法に基づいて、大気汚染常時監視測定局にて環境大気の汚染状況を常時監視(24時間測定)しています。測定局は、一般環境大気測定局(一般局)と幹線道路を対象とした自動車排出ガス測定局(自排局)の2種類があり、平成18年度末で一般局は全国に1581局、自排局は451局あります。測定項目は、非メタン炭化水素(NMHC)SPM、PM2.5、SOx、NOx、CO、光化学オキシダントなどです。この項では、測定局における測定方法やその他の測定法について説明します。

3.3.1 NMHC

測定局において、炭化水素の測定には、NMHC測定方式(直接法)が標準測定法として採用されています。排出口から排出されたVOCは、大気環境中でNMHCとして検出されます。測定方法は、NMHCとメタンをGCによって分離し、それぞれをFIDで検出する方法です。

NMHCの測定方法の詳細は、環境大気常時監視マニュアル第6版1)及びJIS B 7956「大気中の炭化水素自動計測器」2)に記載があります。


3.3.2 VOC、アルデヒド類成分

VOC、アルデヒド成分の測定方法は、「有害大気汚染物質測定方法マニュアル 第2部 有機化合物の容器採取・固体吸着による測定方法」3)及び「環境大気中の揮発性有機化合物(VOC)濃度モニタリングに係る測定方法マニュアル」4)を参考にすることができます(3.1.2を参照)。


3.3.3 無機ガス

測定局で測定されている無機ガスは、SO2、NOx、COの3種類です。

(ア) SO2

石油、石炭等を燃焼したときに含有される硫黄が酸化されて発生します。測定法としては、溶液導電率法(湿式測定法)と紫外線蛍光法(乾式測定法)があります。溶液導電率法は、試料大気を過酸化水素水に通してSO2を吸収させ、生成した硫酸による電気導電率の変化を測定して、SO2濃度を測定する方法です。一方、紫外線蛍光法は、試料大気に波長の短い紫外線を照射した時のSO2の蛍光の強度を測定して、SO2濃度を測定する方法です。

SO2の測定方法の詳細は、環境大気常時監視マニュアル第6版1)及びJIS B 7952「大気中の大気中の二酸化硫黄自動計測器」5)に記載があります。

(イ) NOx

大気中のNOxの多くは、自動車排ガス、燃焼炉排ガス中に含まれます。測定法としては、吸光光度法(湿式測定法)のほか、化学発光法(乾式測定法)があります。吸光光度法は、ザルツマン試薬にNO2を吸収させたときの発色の545 nmにおける吸光度を測定し、NO2濃度を測定する方法です。NOは、ザルツマン試薬とは反応しないので、硫酸酸性過マンガン酸カリウムの酸化液を通してNO2に酸化した後に同様に測定します。一方、化学発光法は、試料大気中のNOとオゾンの反応により生じる化学発光強度を測定することで、NO濃度を測定する方法です。NO2は、コンバータと呼ばれる変換器によりNOに変換して化学発光強度を測定するとNOx濃度が測定できるため、NO濃度を差し引いて求めます。

NOxの測定方法の詳細は、環境大気常時監視マニュアル第6版1)及びJIS B 7953「大気中の窒素酸化物自動計測器」6)に記載があります。

(ウ) CO

NDIRを用いる方法が定められています。COの測定方法の詳細は、環境大気常時監視マニュアル第6版1)及びJIS B 7951「大気中の一酸化炭素自動計測器」7)に記載があります。


3.3.4 粒子

VOCは排出される時点では気体ですが、大気中で粒子化すると言われており、大気中のSPMやPM2.5の削減のためにはVOCの削減も重要といわれています。ここでは、大気中の粒子を測定する方法を粒径別に記載します。

(ア) SPM

大気環境基準にあるSPMは直径が10 µm以下の粒子のことです。測定方法としては、フィルタに採取して質量を秤量する重量法(標準測定法)、または重量法と等価な値が得られる自動測定機による方法(光散乱法、圧電天びん法、若しくはβ線吸収法)とされています。このうち、大気汚染常時監視にはほとんどβ線吸収法が使われています。これは、サイクロンで分粒した粒子をテープろ紙に捕集し、ここにβ線を当てるとその吸収量が粒子の質量に比例することを利用した測定方法です。

SPMの測定方法の詳細は、環境大気常時監視マニュアル第6版1)及びJIS B 7954「大気中の浮遊粒子状物質自動計測器」8)に記載があります。

(イ) PM2.5

PM2.5は直径が2.5 µmより小さい粒子のことで、SPMよりも健康影響に密接に関与するものとして平成21年に環境基準が設定されました。大気中のPM2.5の測定方法は、フィルタに採取した粒子の質量を秤量する重量法、またはこれと等価な値が得られる自動測定機による方法とされています。自動測定機としては、環境省が標準測定法との等価性試験を行い、結果を公表しています9,10)。2011年1月31日現在、等価性があると認められた機種はβ線吸収法若しくはβ線吸収法と光散乱法のハイブリッド型の装置となっています。PM2.5の測定方法の詳細は環境大気常時監視マニュアル第6版1)及びJIS Z 8851「大気中のPM2.5測定用サンプラ」11)に記載されています。

(ウ) ナノ粒子

ナノ粒子とは、一般に粒径が1~100 nm程度の粒子と言われています。ナノ粒子は表面積が大きく活性が高いため産業利用も期待されていますが、粒径が非常に小さいことから、吸入すると肺胞の奥深くまで到達し血液にまで浸透するため健康影響も懸念されています。しかし、ナノ粒子の健康影響はまだ未解明な点も多く、測定方法についても公定法はまだありません。

大気中のナノ粒子は、質量は非常に小さいものの、個数が多いため、個数濃度を測定することが一般的です。そのためには、大気中のさまざまな粒径の粒子を粒径別に分級する必要があります。分級の手法としては、荷電した粒子の電気移動度を利用する方法と、粒子の慣性力を利用する低圧インパクターを用いた方法が広く用いられています。

電気移動度を用いた分級器としては微分型電気移動度分級装置(Differential Mobility Analyzer、DMA)が多く用いられています。一般的なDMAは、荷電させた粒子を、クーロン力によって引き寄せ、下流に設けたスリットに到達した粒子のみを取り出すことにより、特定のサイズの粒子を得ることができます。また、印加電圧を変えることにより、任意のサイズの粒子を得ることができます12)

DMAで分級した粒子個数を計測するためには、ファラデーカップエレクトロメータ(FCE)や凝縮核計数器(Condensation Nucleus Counter、CNC、凝縮粒子カウンター(CPC)とも呼ばれる)が用いられます。FCEは粒子の運んできた電荷を電流として計測するものです。CNCは光学的に検出できないナノ粒子を、ブタノール蒸気を凝縮させて大きくし、光散乱検出器で計測する装置です。

DMAとCNCを組み合わせたものが、走査型移動度粒径測定器(Scanning Mobility Particle Sizer、SMPS)としてよく用いられています。この装置では粒径分布を得るのに通常数分間かかります。これに対し、検出器を多段のエレクトロメータにし、感度は劣るものの粒径分布をほぼリアルタイムで測定できる装置も開発されています。一方、東京都地域結集型研究開発プログラムでは、DMAとFCEとを一体化した装置を開発・商品化しました。本装置は、環境中に浮遊している1 µm以下の微小粒子の粒径別数濃度と表面積を計測できます(図1.3.3.1)。

粒子の慣性力を利用して分級する方法としては、多段式(カスケード)インパクターがあります。通常のインパクターではノズル流速を大きくしてもナノ粒子まで分級することは難しいのですが、これを低圧下で操作することによりナノ粒子まで分級することができます。また、電子式低圧インパクター(Electrical Low Pressure Impactor、ELPI)では、コロナ放電により荷電した粒子を低圧カスケードインパクターで分級し、各段で粒子が運んだ電荷をエレクトロメータで測定することにより、粒子個数を測定できます(図1.3.3.2)。ELPIではリアルタイムで個数濃度分布を測定するとともに、インパクターに捕集された粒子の化学分析を行うことができますが、分級精度はSMPSに比べると劣ります。

図1.3.3.1 本事業で開発したDMA(左)と大流量型DMA(右)
(写真提供:柴田科学株式会社)

図1.3.3.2 ELPIの原理


3.3.5 光化学オキシダント

光化学オキシダントの測定方法は、吸光光度法、電量法(湿式測定法)、紫外線吸収法、化学発光法(乾式測定法)があります。光化学オキシダントの測定方法の詳細は環境大気常時監視マニュアル第6版1)及びJIS B 7957「大気中のオゾン及びオキシダントの自動計測器」13)に記載されています。


3.3.6 臭気

環境大気の臭気は、排出口と同様、「特定悪臭物質濃度」と「臭気指数」のどちらかで評価します(3.1.5参照)。規制基準は、敷地境界線上(1号規制)が適用されます。

(ア) 特定悪臭物質濃度の測定方法

敷地境界線では、特定悪臭物質22種全てが規制対象となっています。表1.3.3.1に特定悪臭物質(22物質)の測定方法(敷地境界線)14)を示しました。

表1.3.3.2 特定悪臭物質(22物質)の測定方法(敷地境界線)の概要
特定悪臭物質 試料採取方法 分析方法
アンモニア 吸収瓶による捕集(5分間) 分光光度計
メチルメルカプタン
硫化水素
硫化メチル
二硫化メチル
バッグサンプリング
(6~30秒)
GC-FPD
トリメチルアミン 吸収瓶による捕集(5分間) GC-FID
アセトアルデヒド
プロピオンアルデヒド
n-ブチルアルデヒド
イソブチルアルデヒド
n-バレルアルデヒド
イソバレルアルデヒド
バッグサンプリング
(6~30秒)
GC-FTD(アルカリ熱イオン化検出器)
GC-MS
イソブタノール
酢酸エチル
メチルイソブチルケトン
トルエン
スチレン
キシレン
バッグサンプリング
(6~30秒)
GC-FID
プロピオン酸
ノルマル酪酸
ノルマル吉草酸
イソ吉草酸
試料捕集管(5分間採取) GC-FID

(イ) 臭気指数

環境試料の臭気指数は、基本的には排出口と同様の方法で求めることができますが、排出口と比較して濃度が小さいため、異なるサンプリング方法や判定方法が定められています。詳細は平成7年環境庁告示63号15)や嗅覚測定法マニュアル16)に記載されています。以下に概要を示します。

(1) サンプリング

環境試料は、悪臭の時間的な変動が大きいため、短時間(6~30秒)で試料を採取する必要があります。そのため、サンプリングは、直接採取法、間接採取法のほか、真空瓶法(あらかじめ内部を減圧しておいた真空瓶を用いる方法)や吸引瓶法(あらかじめ内部を減圧し、内部に試料採取袋を装着した吸引瓶を用いる方法)を用います。

(2) 判定試験

環境試料は濃度が低いため、排出口試料の判定試験では精度のよい測定値が得られません。環境試料の場合は、6人のパネルに希釈した試料を入れたにおい袋と無臭空気を入れた袋(ブランク)2つから試料を入れたにおい袋を選ばせる作業を3回行います。そして、18回の選定結果に正解1.00、不正解0.00、選定不能0.33と点数を与え、平均正解率を求めます。この値が0.58未満の場合は判定試験を終了します。0.58以上の場合は希釈倍数を10倍して再度上記の操作を行います。

(3) 臭気指数の算出

臭気指数は以下の式から計算します。

Y=10log(M×10((r1-0.58)/(r1-r0)))

この式において、Yは臭気指数、Mは当初希釈倍数、r1は当初希釈倍数に係る平均正解率、r0は当初希釈倍数を10倍したときの平均正解率を表します。

引用文献

  1. 環境省、「環境大気常時監視マニュアル第6版」、環境省ホームページ、http://www.env.go.jp/air/osen/manual_6th/index.html、2011/06/13確認
  2. JIS B 7956(大気中の炭化水素自動計測器)
  3. 環境省、「有害大気汚染物質測定方法マニュアル」、環境省ホームページ、http://www.env.go.jp/air/osen/manual2/index.html、2011/06/13確認
  4. 環境省、「環境大気中の揮発性有機化合物(VOC)濃度モニタリングに係る測定方法マニュアル」、環境省ホームページ、http://www.env.go.jp/air/osen/manual_voc/index.html、2011/06/15確認
  5. JIS B 7952「大気中の大気中の二酸化硫黄自動計測器」
  6. JIS B 7953「大気中の窒素酸化物自動計測器」
  7. JIS B 7951「大気中の一酸化炭素自動計測器」
  8. JIS B 7954「大気中の浮遊粒子状物質自動計測器」
  9. 環境省 水・大気環境局大気環境課、「微小粒子状物質の標準測定方法と等価性を有する自動測定機について」、平成22年(2010)10月15日
  10. 環境省 水・大気環境局大気環境課、「微小粒子状物質の標準測定方法と自動測定機の等価性評価結果に関する考え方」、平成23年(2011)1月31日
  11. JIS Z 8851「大気中のPM2.5測定用サンプラ」
  12. Shin Chen Wang and Richard C. Flagan,“Scanning Electrical Mobility Spectrometer”, Aerosol Science and Technology, 13、1990、pp.230-240
  13. JIS B 7957「大気中のオゾン及びオキシダントの自動計測器」
  14. 環境省、「環境庁告示9号 特定悪臭物質の測定の方法」、環境省ホームページ、http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=10000022、2011/06/22確認
  15. 環境省、「平成7 年環境庁告示63 号」、環境省ホームページ、http://www.env.go.jp/hourei/syousai.php?id=10000019、2011/06/22確認
  16. 環境省管理局大気生活環境室、「嗅覚測定法マニュアル 第5版」、(社)におい・かおり環境協会、2005
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