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1 基礎編
第3章 VOCおよび関連項目の測定方法

3.4 室内環境における測定

室内環境中のVOCは、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因として懸念されています(1.3.1(イ)参照)。事業所内においても、事務室などは室内環境に該当します。

室内環境においては厚生労働省により13物質について室内濃度指針値が定められており、また総揮発性有機化合物(TVOC)濃度の暫定目標値が定められています(表1.1.3.2)。本項ではこれらの測定方法について述べます。

3.4.1 VOC、アルデヒド類成分

VOC、アルデヒド類成分のうち、指針値物質の測定法に関しては、厚生労働省により「室内空気中化学物質の測定マニュアル」1)が示されています。このマニュアルに記載されている測定法は、精密測定法(標準的測定法)であり、1. 室内化学物質濃度の最大値を求める場合、2. 厳密な測定を行う場合、3. 指針値との比較を行う場合、の測定法です。新築住宅の測定と居住住宅の測定について示されており、新築住宅では住居を評価するための最高濃度となるように、30分の換気後、5時間以上密閉して30分間空気を採取することとされています。一方、居住住宅においては居住状態での濃度レベルを知るため、日常生活を営みながら24時間空気を採取することとされています。

分析方法は、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドについては、DNPH誘導体化固相吸着/溶媒抽出-高速液体クロマトグラフ法、VOCについては、固相吸着/溶媒抽出法、固相吸着/加熱脱着法及び容器採取法とガスクロマトグラフ/質量分析法の組み合わせによって行います。

なお、上記の測定法は主に指針値物質を測定するための方法ですが、その他のVOCについても標準品を用いることで定量が可能です。また、後述するTVOC濃度も算出することができます。

新築住宅での室内空気の測定風景を図1.3.4.1に示しました。この測定では、加熱脱着用サンプラにVOCを捕集して、DNPHサンプラにアルデヒド類を捕集しています。また、PIDモニタによってTVOC濃度をモニタリングしています(3.4.2参照)。測定位置は、部屋の中央、高さ1.2 m付近となっています。また、同時に温湿度計により、温度と湿度も計測しています。

図1.3.4.1 室内空気採取風景

3.4.2 TVOC

TVOCの測定により、指針値のないVOC、定性が困難なVOCの量を見積もることができます。室内には指針値物質以外にも多種のVOCが存在するため、シックハウス症候群を予防するためには、TVOC濃度を把握して十分に低減することが重要です。TVOCは暫定目標値400 µg/m³とされています(1.3.1(イ)参照)。

TVOCの測定方法には精密測定法と簡易測定法があります。一般に室内環境におけるTVOCは精密測定法の固相吸着-ガスクロマトグラフ法を用いて求めた値を指します。測定方法によってTVOCの値は異なるため、測定結果にはサンプリング方法、分析方法等の測定条件を併記する必要があります。

(ア) 精密測定法

VOCと同様の方法(固相吸着-ガスクロマトグラフ法)で分析します。濃度はGCクロマトグラムに検出されたピークを定量して合計した値から求めますが、合計する範囲は、便宜上、ヘキサンからヘキサンデカンの範囲に検出されるピークを対象とします。厚生労働省2)では、これらのピークの成分について標準品を用いて可能な限り定性(全検出ピークの1/2から2/3)及び定量し、定性できなかったピークについては面積を合計してトルエン相当量に換算して定量し、両者を合計してTVOC濃度とします。一方、建築学会では、JIS A 1965「室内及び放散試験チャンバー内空気中揮発性有機化合物のTenaxTA(R)吸着剤を用いたポンプサンプリング,加熱脱離及びMS/FIDを用いたガスクロマトグラフィーによる定量」3)に準拠し、ヘキサンからヘキサンデカンの範囲に検出される全てのピークの面積を合計しトルエン換算する方法を提唱しています4)

(イ) 簡易測定法

簡易測定法は、装置が比較的小型で持ち運びやすく、かつ操作が簡便で、現場で測定値が得られるものです。半導体式センサ法やPIDなどがあります。これらの測定法はVOCの種類によって感度が異なることやVOC以外の物質の影響を受けることがあり、精密測定法で求めたTVOC濃度と必ずしも一致しません。スクリーニング、濃度の監視などの用途に有用であるといえます。

コラム:
シックハウス問題は解決したのか?

VOCによるシックハウス症候群を防ぐため、行政により様々な対策が行われてきました。厚生労働省により1997年から2002年にかけて室内汚染物質13種について指針値が定められました。また、国土交通省により2000年に住宅の品質確保の促進等に関する法律が施行され、住宅性能表示制度においてホルムアルデヒド対策、換気対策、化学物質濃度測定についての基準が設けられました。更に、2003年には建築基準法が改正され、ホルムアルデヒドを含む建材の使用制限や建材へのクロルピリホスの使用禁止が定められ、機械換気設備の設置が義務付けられました。その結果、国土交通省の実態調査によると、指針値物質の室内濃度は年々減少しています。シックハウス問題は解決したのでしょうか?

同調査によると、新築1年以内の住宅に居住した人のうち化学物質が原因とみられる体調の変化を感じた人の割合は減少していません1)。これは、いまだにシックハウス症候群の症状を感じる人が減っていないことを表しているのかもしれません。最近の新築建物のVOC濃度を測定すると、TVOCの濃度は高いものの、そのうち指針値VOCの割合は僅か6%程度であったという報告があります2)。この原因として、室内環境で使用される化学物質が指針値物質以外の代替物質へとシフトしていることが考えられます。今後シックハウス問題を起こさないようにするには、使用するVOCの量を減らす、より安全なVOCを使用する、などの努力が必要といえます。

1. 財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター、「平成17年度 室内空気に関する実態調査報告書 概要版」、pp.27、http://www.chord.or.jp/tokei/pdf/h17_juutaku.pdf

2. 野口美由貴、水越厚史、柳沢幸雄、「新築保育施設における空気質改善方法 / TVOC濃度変化を指標とした室内空気質評価」、日本建築学会技術報告集, No.36、pp.577-582、2011

引用文献

  1. 厚生労働省、「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告書-第6回~第7回のまとめ について、室内空気中化学物質の測定マニュアル」、厚生労働省ホームページ、http://www.mhlw.go.jp/houdou/0107/h0724-1c.html、2011/06/14確認
  2. 厚生労働省、「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書-第4回~第5回のまとめについて 総揮発性有機化合物(Total Volatile Organic Compounds: TVOC)の空気質指針策定の考え方について」、厚生労働省ホームページ、http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1212/h1222-1_13.html#bessi3、2011/06/15確認
  3. JIS A 1965 「室内及び放散試験チャンバー内空気中揮発性有機化合物のTenaxTA(R)吸着剤を用いたポンプサンプリング,加熱脱離及びMS/FIDを用いたガスクロマトグラフィーによる定量」
  4. 日本建築学会、「総揮発性有機化合物による室内空気汚染防止に関する濃度等規準・同解説」、丸善、2010、pp.32-35
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