東京都地域結集型研究開発プログラムのタイトル図
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1 基礎編
第4章 排出されたVOCの影響と評価法

4.4 臭気の問題

4.4.1 悪臭公害の特徴

悪臭は、騒音や振動とともに感覚公害と呼ばれる公害の一種であるとともに、環境基本法第2条で定める「公害」(いわゆる典型公害)の一つに挙げられています。悪臭による公害は、その不快なにおいにより生活環境を損ない、主に感覚的・心理的な被害を与えるものです。こうした感覚公害の特性から、住民の苦情や陳情と言う形で顕在化し、汚染物質等の蓄積はないものの、広範囲に「影響」を及ぼすこともあります。

悪臭の大部分は、低濃度・多成分の臭気物質からなっています。これらが複合して住民の嗅覚に作用し、苦情に結びつきます。しかし、嗅覚という感覚には個人差があり、その感度は年齢、性別、健康状態、喫煙の習慣などに影響されます。このため、特定の人には悪臭として感じられるが、他の人は感じないといった状況が起こります。

また、悪臭の原因となる臭気物質は広範囲に風で運ばれて拡散するため、発生源の特定を難しくしている場合も少なくありません。更に、公害苦情の特徴である地域の人間関係や例えば土地の境界争いといった悪臭の程度とは無関係の別の要因も加わり、悪臭苦情問題を複雑にしている例もあります。上記のように種々の要因が関係することで、人の感覚に基づく悪臭問題の解決はしばしば困難となり、その対応に長期間を要することが多いのです。


4.4.2 悪臭に係る苦情

(ア) 近年の推移

平成20年度の総苦情件数16,245件のうち、悪臭防止法の規制対象となる規制地域内の工場・事業場に対するものは6,507件(40.1%)、規制地域外の工場・事業場に対する苦情が2,305件(14.2%)でした。発生源の業種別に見ると、化学工場、飼料・肥料、食料品製造工場が8.8%、印刷塗装業などを含むその他の製造工場が10.5%と、製造工場全体で全苦情件数のおよそ2割を占めています(図1.4.4.1)。

悪臭に関する苦情件数は、悪臭防止法が制定された昭和47年をピークに減少傾向にありました。しかし、平成5年以降は増減を繰り返し、過去10年間の苦情件数は昭和40年代後半から50年代前半と同等のレベルで推移しています(図1.4.4.2)。これは野外焼却や小型焼却炉の関係の他に、国民がダイオキシン汚染に対して過敏になっており、従来ならば苦情の電話を掛けなかった程度のものでも苦情対象になったことが原因となったとされています。

図1.4.4.1 悪臭に係る苦情の内訳(平成21年度)
(転載:環境省、「平成21年度悪臭防止法施行状況調査について」、環境省ホームページ、2010/12/24更新、http://www.env.go.jp/air/akushu/kujou_h21/index.html、2011/06/06確認)

図1.4.4.2 悪臭苦情件数の推移
(転載:環境省、「平成21年度悪臭防止法施行状況調査について」、環境省ホームページ、2010/12/24更新、http://www.env.go.jp/air/akushu/kujou_h21/index.html、2011/06/06確認

(イ) 悪臭苦情に対する基本的な考え方

臭気対策行政ガイドブック(http://www.env.go.jp/air/akushu/guidebook/index.html)では「悪臭苦情に対する基本的な考え方」として、次のように述べられています。「事業活動に伴って排出される臭気によって、工場・事業場と周辺住民との間にトラブルが生じる場合があり、そのうちのいくつかが悪臭苦情として市区町村などに持ち込まれる。苦情の発生は、原因となる工場・事業場が規制の対象であるか、また、規制基準に適合しているかを問わない。したがって、苦情があった場合、規制対象の事業者に法に定める規制基準を遵守させることはもちろんであるが、場合によっては、苦情対応として規制対象でない事業者に防止対策を講じさせたり、規制基準遵守以上の改善をするよう事業者を説得することなどが重要となる。」

以上のことから、製造工場を含む各種事業所での悪臭防止施策の推進が重要視されています。悪臭によるハザードを回避するための、有効な防止策としてVOC処理装置や脱臭、防臭装置の導入が推奨されます。


4.4.3 悪臭防止法における臭気の評価方法

各都道府県知事が定めた規制地域内の工場等で事業活動に伴って悪臭物質を発生させるものは悪臭防止法の適用を受けます。悪臭防止法での規制には2通りあります。

(ア) 悪臭物質の濃度による規制

特定悪臭物質として指定されている22物質(1.5.2 表1.1.5.4)については、機器分析で濃度を測定し(基礎編3.1.5 (ア)及び基礎編3.3.6 (ア)参照)、対応する臭気強度を求めます。特定悪臭物質の濃度と臭気強度の対応は表1.4.4.1に示す通りです。事業場敷地境界線における規制基準値は、6段階臭気強度表示法(表1.4.4.2)の臭気強度2.5から3.5に対応する特定悪臭物質の濃度として定められています。ただし、においの感じ方・不快感には、個人差や地域差などがあることから、地域の実態に応じて基準値を各都道府県知事が設定することとされています。

表1.4.4.1 規制基準が設定される特定悪臭物質名と臭気強度に対応する濃度
(転載:(社)におい・かおり環境協会編、ハンドブック悪臭防止法、ぎょうせい (2010))
○規制基準が定められているもの
特定悪臭物質名 規制基準の設定 臭気強度に対応する濃度(ppm)
第1号 第2号 第3号 臭気強度2.5 臭気強度3.0 臭気強度3.5
アンモニア 1 2 5
メチルメルカプタン 0.002 0.004 0.01
硫化水素 0.02 0.06 0.2
硫化メチル 0.01 0.05 0.2
二硫化メチル 0.009 0.03 0.1
トリメチルアミン 0.005 0.02 0.07
アセトアルデヒド 0.05 0.1 0.5
プロピオンアルデヒド 0.05 0.1 0.5
ノルマルブチルアルデヒド 0.009 0.03 0.08
イソブチルアルデヒド 0.02 0.07 0.2
ノルマルバレルアルデヒド 0.009 0.02 0.05
イソバレルアルデヒド 0.003 0.006 0.01
イソブタノール 0.9 4 20
酢酸エチル 3 7 20
メチルイソブチルケトン 1 3 6
トルエン 10 30 60
スチレン 0.4 0.8 2
キシレン 1 2 5
プロピオン酸 0.03 0.07 0.2
ノルマル酪酸 0.001 0.002 0.006
ノルマル吉草酸 0.0009 0.002 0.004
イソ吉草酸 0.001 0.004 0.01

表1.4.4.2 6段階臭気強度表示法による臭気強度と規制基準の関係
(転載:環境省、「臭気対策行政ガイドブック」、環境省ホームページ、2002/04更新、http://www.env.go.jp/air/akushu/guidebook/01.pdf、2011/06/06確認)

(イ) 臭気指数による規制

ある発生源から多種類の悪臭物質が排出されると、それらが複合して強い複合臭となる場合があります。このような場合、個々の特定悪臭物質についての規制基準は下回っていても苦情・陳情に結びつくことがあります。

また、臭気濃度は、基本的には臭気物質の濃度と正比例の関係にあります。これに対し、人間の感覚(知覚強度)は対数関数的な増減をします(ヴェーバー‐フェヒナーの法則)。このため、より人の感覚に近い評価方法として臭気指数による規制が導入されました。

臭気指数は以下のように定義されています。

「平成7年環境庁告示第63号「臭気指数及び臭気排出強度の算定の方法」(嗅覚測定法)により、あらかじめ嗅覚が正常であることの検査(嗅覚検査)に合格した被検者が、試料を無臭空気で希釈したものを嗅いでいき、臭気を感じなくなったときの希釈倍数(臭気濃度)を求め、その常用対数値に10を乗じた数値をいう。

臭気指数=10×log(臭気濃度)」 (引用:環境省、「臭気指数規制ガイドライン」、平成13年3月、http://www.env.go.jp/air/akushu/guide_ind/index.html

臭気指数の測定方法については、基礎編3.1.5(イ)及び基礎編3.3.6(イ)を参照してください。


4.4.4 臭気対策に関するリンク

(ア) 臭気対策行政ガイドブック [環境省]

http://www.env.go.jp/air/akushu/guidebook/index.html

(イ) 悪臭防止法施行状況調査(悪臭苦情の統計データ) [環境省]

http://www.env.go.jp/air/akushu/index.html

(ウ) においシミュレータ(臭気指数規制第2号基準算定ソフト) [環境省]

http://www.env.go.jp/air/akushu/simulator/index.html

環境省では悪臭防止法施行規則第6条の2に定められた排出口における臭気排出強度及び臭気指数に係る規制基準の設定方法等に基づき、規制基準を容易に算出するソフトウェア(においシミュレータ)を作成、公開しています。このソフトでは、算出された結果と実際の排出ガスの臭気排出強度及び臭気指数を比較することにより、規制基準への適合状況を判断することができます。においシミュレータは以下のサイトからダウンロードして使用することができます。

ただし、東京都ではにおいシミュレータを使わずに計算できる規制基準値が設定されています。

規制・指導基準 (東京都環境局)
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/air/offensive_odors/restriction_guide.html

(エ) 臭気測定認定事業所 [公益社団法人におい・かおり環境協会]

http://www.orea.or.jp/data/ninteiList.html

(社)におい・かおり環境協会は、臭気に係わる嗅覚測定法が適切に行われることを目的として、平成5年4月から事業所単位の資格である「臭気測定認定事業所」の審査登録制度を設け、技術基準や設備基準等を満たす機関の認定事業を行っています。

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