事業所における環境影響低減方法の中でもVOC処理装置の導入は、より直接的に確実に環境影響軽減につながる方法であるといえます。VOC処理装置には、大きく分けて、燃焼法、吸着法、その他の方法があります。何れの方法でも、環境影響低減方法としてVOC処理装置を導入する場合、VOC処理装置から排出されるガスの環境影響評価を行っておく必要があります。事業所における環境影響評価と同様にアウトプットデータから環境影響評価を行い、インプットデータにフィードバックすることにより装置全体の環境影響軽減効果を評価します(図1.5.3.1参照)。
図1.5.3.1 VOC処理装置における環境負荷の評価項目
エネルギー使用量は、装置稼働に伴うエネルギー量を指します。乾燥炉などの製造工程中に、発生する熱を利用できる場合は、このエネルギー使用量から差し引くことができます。また、処理しなければならないVOCの投入量に応じて装置の運転条件を制御することによりエネルギー使用量を減らすことができます。
VOC投入量は、処理装置に導入されるVOCの量を指します。VOC濃度×風量により算出されますが、装置のVOC処理能力・特性とともに作業環境の保全にも留意した装置の設計・配置が必要になります。また、溶剤の回収機能を有した装置では、再利用する溶剤量を事業所におけるインプットデータに加えることになります。
CO2排出量には、処理装置稼働のためのエネルギー消費により発生するもののほか、VOCの分解・燃焼に伴って発生するCO2が含まれます。使用されたエネルギーは、環境省より公表されている二酸化炭素排出係数1)によりCO2排出量に換算することができます。また、燃焼法によるVOC処理では、補助燃料が別途必要になる場合があり、ランニングコストの上でも大きな割合を占めます(基礎編第2章2.5及び塗装編第5章5.3参照)。
無機ガス排出量とVOC排出量は、処理されなかったVOCと装置によって処理される際に副生成物として発生する無機ガス及びVOCを指します。処理装置の設計においては、導入されたVOCより排出される物質の環境影響が十分に低いことが求められます。特に多くの処理装置で導入されているVOCの酸化処理で発生しやすい含酸素化合物は、悪臭の原因物質となることがあるので、処理後に悪臭が増加することもあり、注意が必要です。表1.5.3.1に装置設計において留意すべき項目について示しました。各項目のランクに従って図1.5.3.2のようなグラフを作成し、総合的観点からみたVOC処理装置の評価を行うことが有効です。
また、VOC処理装置の導入には、装置購入によるイニシャルコストの他、装置稼働のためのランニングコスト、装置メンテナンスに係るコストと装置の耐用年数も考慮する必要があります。エネルギーや燃料の使用量を削減することは、CO2とコストの両者を削減することにつながるため、複数の技術及び設備との組み合わせと、事業所の特性に合わせた選択が必要です(基礎編第2章2.5)。
ランク | CO2 (kg/日) |
オキシダント (ppm) |
粒子 (mg/m³) |
毒性* (ppm) |
悪臭 (臭気強度) |
コスト** (万円) |
処理風量 (m³/min) |
寿命 (年) |
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* :TLV/100を規準とする。表はトルエンについて計算した例 **:イニシャルコストのみ、装置稼働、補助燃料、メンテナンスなどは別途計算が必要 |
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1 | <10 | <0.01 | <0.01 | <0.05 | 0,1 | <100 | >1000 | >20 |
2 | 10-30 | 0.01-0.02 | 0.01-0.03 | 0.05-0.1 | 2 | 100-300 | 500-1000 | 10-20 |
3 | 30-50 | 0.02-0.03 | 0.03-0.05 | 0.1-0.3 | 3 | 300-500 | 100-500 | 5-10 |
4 | 50-100 | 0.03-0.05 | 0.05-0.1 | 0.3-0.5 | 4 | 500-1000 | 10-100 | 3-5 |
5 | >100 | >0.05 | >0.1 | >0.5 | 5 | >1000 | <10 | <3 |
図1.5.3.2 VOC処理装置の評価項目