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2 塗装編
第1章 工場内塗装におけるVOC排出の測定と実態

1.4 小規模塗装工場におけるVOC排出の実態

東京都内において工業製品への塗装を専業とする小規模塗装工場の塗装工程のうち、法規制の対象になっている吹付け塗装施設の塗布工程および乾燥工程に関するVOC排出実態を、VOC濃度連続測定により解析を行った調査結果について報告します。

1.4.1 調査事業所と塗装施設の概要

VOC排出実態調査を行った事業所の概要は次のとおりです。

業種: 金属製品塗装業
事業所数: 4事業所(図2.1.4.1)
地域: 東京都内
規模: 従業員数20人以下

本調査では、塗装施設の基礎データとして聞き取り、および現場での観察調査を行いました。調査した4事業所の塗装施設の概要を表2.1.4.1に示します。

図 2.1.4.1 ハンドスプレーによる塗装作業

いずれの事業所もハンドスプレーによるバッチ式の塗装施設で、使用する塗料はメラミン樹脂塗料が最も多く、その比率も大半を占めています。 また、VOC削減に効果のある塗装機器として粉体塗料を塗装するための粉体塗装機や塗着効率の向上が図れる静電塗装機を導入していました。 塗料使用量は、事業所Bが塗料と溶剤の合計量で28.2 tと最も多く、事業所Dの11 t、事業所Cの8.2 t、事業所Aの3.7 tと続きます。 しかし、その中に含まれる各事業所のVOC対象物質総量は、塗料中に含まれる溶剤等の揮発性物質と希釈・洗浄溶剤量の合計となるため、これらの数値と希釈・洗浄溶剤量の数値の間にとなると考えられます。

吹付け塗装において規制対象施設となる塗装ブースからの排出系統は、いずれの事業所も塗装ブースを2基有していますが、最終的な排出口となる排気ダクトをそれぞれに別にしているのが2事業所、途中で結合して一つにしているところが2事業所でした。

表2.1.4.1 調査塗装施設の概要


1.4.2 VOCの排出調査方法

VOCの排出実態について次の項目に関する測定を行い、解析しました。

(ア) VOC濃度の測定

各事業所の吹付け塗装施設の塗装ブースおよび乾燥炉の排気ダクトから排出されるガスに対し、VOC濃度の連続測定を、FID式ポータブル全炭化水素計を用いて行いました。 また、連続測定時に並行して公定法(平成17年環境省告示第61号、水素炎イオン化形分析計(FID)法)に準拠した測定を行いました(図2.1.4.2)。

(イ) 排ガス量の測定

ピトー管または熱式風速計を用いてダクト内の排ガスの風速を測定するとともにダクトの断面積を計測し、次式により算出しました。

排ガス量(m³/h)=ダクト断面積(m²)×風速(m/s)×60²

(ウ) 使用塗料

調査時の使用塗料に関して、聞き取り、MSDS、現地でのサンプリングを行いました。

図2.1.4.2 工場におけるVOC採取とVOC濃度の測定(例)


1.4.3 VOCの排出実態

(ア) 塗布工程のVOC排出実態1)

調査時における各事業所の塗装ブースからのVOC排出実態を表2.1.4.2に、塗装に使用された塗料の種別、用途、加熱残分、揮発分、MSDSに示された成分の種類を表2.1.4.3に示します。

表2.1.4.2 吹付け塗装施設における塗布工程のVOC排出実態

表2.1.4.3 調査時に各塗装施設で使用された塗料の種別と性状

各塗装施設のVOC濃度は、いずれも平均値で400ppmC以下であり法排出基準値の700ppmを下回り低濃度でした。 しかし、濃度の変動が大きく、最小で11ppmC、最大で1048ppmCを示す事業所、時刻がありました。 吹付塗装施設のダクトから排出されるVOCの濃度は、排ガス量、時間当たりの塗料吐出量、塗料中のVOC成分比に左右されると考えられます。 VOC排ガス量の違いによる濃度への影響は、事業所AとDの調査結果に現れており、事業所AのVOC排出量はDの約1/3にもかかわらず、排ガス量が少ないためVOC濃度は倍近い値を示しました。

4塗装施設の調査時間あたりの使用した塗料の種類は、少ない施設でも2種類、多い施設は10種類と少量他品種を特徴とする小規模塗装工場の実態を示していました。 塗料の多くはメラミン樹脂塗料であり、1コート仕上げが主に行われていましたが、事業所B、Cでは被塗物によりエポキシ樹脂塗料を下塗り、メラミン樹脂塗料を上塗りにした2コート1ベーク仕上げが行われていました。 それぞれの塗料における希釈前の加熱算分、塗装時に希釈した後の加熱算分と揮発分の比(%)から、塗料により塗装時の揮発分(VOC成分)に違いがあることがわかりました。 また、塗料中のVOCと考えられる成分は、調査時間内だけでも最も少ない事業所で7成分、最も多い事業所では16成分にのぼり、塗装加工時においては、排出されるVOCの種類も多いことがわかりました。 これら4事業所の調査時に使用された塗料の種別における塗装時の揮発分(VOC)比の平均値について、樹脂の種類によるものを表2.1.4.4、下・上塗りといった用途によるものを表2.1.4.5にまとめました。 樹脂の種類では、エポキシ樹脂塗料が主に使用されるメラミン樹脂塗料に比べて22%、また用途では、下塗り塗料が上塗り塗料に比べて15%揮発分が多く、種別によりVOC成分に違いがあることがわかりました。

表2.1.4.4 調査時に使用された塗料の種別(品種)の加熱残分と揮発分(VOC成分)比
種別(品種) 希釈塗料加熱残分(%) 希釈塗料揮発分(%)
メラミン樹脂塗料 52 48
エポキシ樹脂塗料 30 70
ラッカー(導電塗料) 57 43
合成樹脂 27 73
表2.1.4.5 調査時に使用された塗料の種別(用途)の加熱残分と揮発分(VOC成分)
種別(用途) 希釈塗料加熱残分(%) 希釈塗料揮発分(%)
下塗り用 37 63
上塗り用 52 48

(イ) 乾燥工程のVOC排出実態

調査時における事業所A、事業所Bの乾燥炉からのVOC排出実態を表2.1.4.6に示します。

表 2.1.4.6 吹付け塗装施設における乾燥工程のVOC排出実態

事業所Aの乾燥炉ダクト内VOC濃度が平均で141ppmCなのに比べて、事業所Bでは平均1,041ppmCと7倍以上の濃度を示していました。 これは、乾燥炉の大きさの違いから乾燥可能な被塗物の量(総面積)が異なるため、事業所Aより大きい事業所Bの乾燥炉から発生するVOC排出量が多いことと、 さらに、ダクトからの排ガス量は、逆に事業所Bの乾燥炉の方が少ないため、事業所Bの乾燥炉のダクト内VOC濃度が大きくなったと考えられます。


1.4.4 VOC濃度の変化

(ア) 塗布工程のVOC濃度の変化

塗装施設から排出される塗布工程のVOCの全測定時間の濃度変化において、同じ塗料、被塗物を塗装している時間を抽出したものを図2.1.4.3に、被塗物、塗料が短く変わっている時間を抽出したものを図2.1.4.4に示します。 図2.1.4.3から、吹付け塗装で同じ塗料、被塗物の場合、似た波形を繰り返していますが、その短い周期の中でVOC濃度の変動幅が大きく、周期も変わりやすいことがわかりました。 また、図2.1.4.4から被塗物、塗料が変化することによりVOC濃度の波形や最大値も変化し、排出量も異なってくることがわかりました。

図 2.1.4.3 吹付塗装作業の時間経過によるVOC濃度変化(1)

図 2.1.4.4 吹付け塗布工程の時間経過によるVOC濃度変化(2)

(イ) 乾燥工程のVOC濃度の変化

塗装施設の乾燥工程から排出されるVOC濃度変化の一例を図2.1.4.5に示します。 乾燥炉の加熱開始後(10時34分)、炉内の温度上昇に伴い、急激なVOC濃度増加が見られます。 事業所Bの乾燥炉のダクト内風速は、表2.1.4.6に示したように0.4m/sと非常に遅い(排ガス量が少ない)ため、VOC濃度は最大で2,104ppmCと高く、波形は山型を示します。 また、乾燥炉内温度が設定温度である100℃に達した後は、30分間温度を保つために、炉のon-offを繰り返すと考えられ、それが排出濃度の小刻みな濃度変化に現れていると考えられます。

図 2.1.4.5 乾燥工程の時間経過によるVOC濃度変化

引用文献

  1. 木下稔夫、「小規模工業塗装工場におけるVOC排出実態調査・研究」、塗装工学、Vol.42、No.7、2007、pp.208-213
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