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2 塗装編
第2章 工場内塗装における臭気

2.3 臭気とVOC成分

塗装、セッティング工程では、樹脂、溶剤、添加剤などの塗料原材料から揮発したVOC成分による溶剤臭やモノマー臭が問題となります。一方、乾燥工程では、焼付時に発生する低級脂肪族アルデヒド類等の、酸化生成したVOCによる焦げ臭が問題となります。表2.2.3.1に代表的な臭気のVOC成分1~3)嗅覚閾値4)を示しました。嗅覚閾値はVOCによって大きく異なり、特に、焼付乾燥工程で生成する低級脂肪族アルデヒド類は嗅覚閾値が低い(臭気が強い)ことが分かります。

表2.2.3.1 塗装工場における臭気のVOC成分と嗅覚閾値
主な発生工程 VOC 嗅覚閾値
(ppm)
特定悪臭物質
塗装工程 トルエン 0.33
o-キシレン 0.38
m-キシレン 0.041
p-キシレン 0.058
酢酸エチル 0.87
酢酸n-ブチル 0.016
メチルエチルケトン 0.44
メチルイソブチルケトン 0.17
アセトアルデヒド 0.0015
イソブタノール 0.011
焼付乾燥工程 ホルムアルデヒド 0.50
プロピオンアルデヒド 0.0010
n-ブチルアルデヒド 0.00067
イソブチルアルデヒド 0.00035
n-バレルアルデヒド 0.00041
イソバレルアルデヒド 0.00010
アクロレイン 0.0036

第1章1.3.3で塗装実験における各工程でのVOC成分濃度と組成比を示しました。この成分濃度をもとに閾希釈倍数及び閾希釈倍数に排出ガス流量を掛け算したものを求めると、図2.2.3.1のようになります。この結果から乾燥工程(③、④)では塗装時、セッティング時と比べて、その他のアルデヒド類(プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、バレルアルデヒド、トルアルデヒド、ヘキサアルデヒド)の値が大きくなり、臭いの主な成分が変化していることが推定されます。

図2.2.3.1 塗装工程ごとのVOC成分濃度と閾希釈倍数(メラミン樹脂塗料使用時)
①塗装時、②被塗物セッティング時、③乾燥開始時、④設定温度(130℃)時

臭気の大部分はVOCに起因するので、臭気対策はVOC対策と同様と考えることができます。基本的な対策としては、1.VOCの蒸発低減対策、2.VOCの使用量の削減、3.低公害塗料への転換、4.建屋からのVOCの漏洩対策、が挙げられます6)。これらの対策のほか、排ガス処理装置の設置も有効です。基本的な対策については、第4章「工程改善によるVOC削減の手法」を、排ガス処理装置については、第5章「塗装工場用VOC処理装置」を参照してください。

引用文献

  1. 環境庁大気保全局特殊公害課、「塗装・印刷工場の防・脱臭マニュアル-悪臭防止法改善普及推進調査結果報告書-塗装工場編,印刷工場編-改定・普及版-」、社団法人 臭気対策研究課、1993、pp.48-49
  2. 塗料・塗装機械協議会、「塗装工場における悪臭防止ハンドブック」、社団法人 日本塗料工業会、日本塗装機械工業会、1995、p.30
  3. 悪臭法令研究会、「ハンドブック 悪臭防止法 四訂版」、株式会社ぎょうせい、2008、p.412
  4. 永田好男、竹内教文、「三点比較式臭袋法による臭気物質の閾値測定結果」、日本環境衛生センター所報、No.17、1990、pp.77-89
  5. 水越厚史、木下稔夫、野口美由貴、齋藤京子、柳沢幸雄、「塗装シミュレータによる塗装工程ごとのVOC成分の調査」、東京都立産業技術研究センター研究報告、5号、2010、pp.52-55
  6. 木下稔夫、「塗装工程における臭気対策の現状と対策および技術課題」、塗装技術、Vol. 45(9)号、2006、pp.58-62
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