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2 塗装編
第3章 塗装VOCの環境への影響と規制

3.2 作業環境

塗装作業を行う作業者の健康障害を防止するためには、作業環境内のVOC濃度を十分に低くする必要があります。そのためには、塗装ブースや乾燥炉などの発生源からの漏出を防ぐことがポイントとなります。本項では、参考のため、実際に作業環境内のVOC濃度レベルを測定した結果の例を示します。また、作業環境においては、労働安全衛生法に基づき有機溶剤に対して作業環境評価基準が定められています。そこで、塗装工場で発生するVOCの作業環境評価基準と管理濃度について説明します。

3.2.1 工場内VOC濃度分布について

塗装工場4か所において工場内VOC濃度分布を調査しました。測定には、ポータブル炭化水素計(FID方式)を用いました。塗装工場Dの例を図2.3.2.1に示します。このように、簡易型の測定器を用いて工場内のVOC濃度分布を調べることによって、作業者がどこでVOCに曝露するかがわかり、曝露低減対策のための情報となります。なお、ここで示した測定値はあくまで参考値で、作業状態によって大幅に変動すると考えられます。

図2.3.2.1 塗装工場Dの工場内VOC濃度分布

4か所の工場で測定場所ごとの濃度分布を集計したものを表2.3.2.1に示します。この調査結果によると、熱風乾燥炉の付近で最も高濃度でした。

表2.3.2.1 工場内VOC濃度分布(ppmC)
測定場所 工場
A B C D
-:測定値なし
マスキング梱包作業場 18-25 - - 12
塗装前作業場 12 50-90 28 20
塗装ブース付近 - 170-190 - 41-63
乾燥炉付近 15-50 31-51 31-55 32-130
塗料倉庫内 - 55 - 2
洗浄装置付近 - - - 8
工場内全体 12-50 31-190 28-55 8-130

3.2.2 作業環境評価基準

作業環境において3.2.1の測定値のようなVOCの総量に対する規準はありません。ただし、個別のVOCについては、労働安全衛生法の規定に基づき、作業環境評価基準が定められています(基礎編1.3.1(ウ)参照)。「有機溶剤を製造または又は取り扱う屋内作業場」に該当する塗装工場では、作業環境評価基準が適用され、作業環境測定が義務付けられています。塗装工場で発生するVOC(表2.1.2.1および表2.2.3.1に基づく)のうち、管理濃度が定められている物質を表2.3.2.2に示します。

表2.3.2.2 塗装作業で発生するVOCと管理濃度
(労働安全衛生法第6の2、抜粋)
VOCの種類 管理濃度
No. 名称 ppm ppmC
42 ホルムアルデヒド 0.1 0.1
51 イソプロピルアルコール 200 600
54 セロソルブ 5 20
55 セロソルブアセテート 5 30
56 ブチルセロソルブ 25 150
57 メチルセロソルブ 5 15
59 キシレン 50 400
66 酢酸エチル 200 800
80 トルエン 20 140
88 n-ブタノール 25 100
90 メタノール 200 200
91 メチルイソブチルケトン 50 250
92 メチルエチルケトン 200 800
- 酢酸ブチル - -
- イソブタノール - -
- アノン - -
- アセトアルデヒド - -
- プロピオンアルデヒド - -
- n-ブチルアルデヒド - -
- イソブチルアルデヒド - -
- n-バレルアルデヒド - -
- イソバレルアルデヒド - -
- アクロレイン - -

表2.3.2.1によると、塗装工場で発生するVOCの管理濃度は、0.1~800ppmCと範囲が広いことがわかります。だだし、代表的な塗料成分であるキシレン、トルエン、n-ブタノールの管理濃度は400, 140, 100ppmCであり、表2.3.2.1の結果は概ねこれより低い値を示しています。塗装ブース付近や乾燥炉付近では一部超過するケースがあるため、これらの発生源付近では局所排気などによる濃度低減が重要といえます。

一方、ホルムアルデヒドの管理濃度は他のVOCと比べて非常に低いことがわかります。ホルムアルデヒドは、アミノ樹脂やアミノアルド樹脂の原料であり、焼付乾燥時に生成します。また、焼付乾燥時に、炉内での熱分解および反応生成物としても生成します1)。実際、塗装実験を行い、乾燥炉ダクト濃度を測定したところ、セッティング時に0.3~1.8ppm、焼付乾燥時に0.7~11.1ppmのホルムアルデヒドが検出されました2)。作業環境内に漏出した場合、管理濃度を超過する恐れがあります。したがって、作業環境中のホルムアルデヒド濃度が高い場合、乾燥炉付近での排ガスの漏出を低減することが重要となります。

引用文献

  1. 臭気対策研究協会:塗装・印刷工場の防・脱臭マニュアル-悪臭防止法改善普及推進調査結果報告書-塗装工場編,印刷工場編-改定・普及版- 環境庁大気保全局特殊公害課編集 (1993)
  2. 水越厚史、木下稔夫、野口美由貴、齋藤京子、柳沢幸雄:「塗装シミュレータによる塗装工程ごとのVOC成分の調査」、東京都立産業技術研究センター研究報告、5号、pp.52-55 (2010)
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