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2 塗装編
第5章 塗装工場用VOC処理装置

5.2 市販の処理装置

5.2.1 小型・低価格な処理装置

市販の処理装置について、「VOC脱臭処理技術評価ガイド」の評価結果一覧を表2.5.2.1に示します。これは環境省が東京都に委託して実施した「排ガス処理装置技術評価調査」(平成18年3月報告)に基づき、製品10機種、試作品2機種の評価をしたものです。処理装置の性能を客観的に第三者が評価して公表している例は稀で、貴重な資料です。

表2.5.2.1において、本体価格300万円以下の製品は4機種が存在します。安価な装置の処理方式は吸着、吸収、プラズマ分解、及び生物分解です。この価格帯では燃焼方式は存在しません。

表 2.5.2.1 VOC処理装置の仕様
(引用:環境省、「VOC脱臭処理技術評価ガイド」、http://www.env.go.jp/air/akushu/voc_guide/index.html、2011/6/6確認)

備考:価格・サイズは本体分だけで、運転費はメーカからの資料提示によります。

表中で本体価格の1番安いEJV-10S(荏原実業株式会社)の100万円から4番目のBITON SB-10(株式会社荏原製作所)の250万円までは、処理風量が9 m³/min以下と小さなものです。塗装工場では、塗装ブース1台が167 m³/min程度ですから、塗装分野で使用するには、用途がかなり限定されます。また、この表の中で、キャノン株式会社のプラズマ分解法による製品は販売されていません。北炭化成工業株式会社は2009年11月に破産手続きを行っています。株式会社荏原製作所の製品は、取り扱いが荏原エンジニアリングサービス株式会社に変更されています。価格が320万円のTR-140P(サーブ・サービス)は風量が83 m³/min(=4,980 m³/h)と大きいのですが、数値は「排ガス処理装置技術評価調査」で設置した装置を短期間評価したのもので、長期間使用したときの吸収液の飽和、液中に含まれた吸着材の破過の見積もりが必要です。

一般に、吸着や吸収によるVOC処理装置は、初期の処理能力は優れていますが、その性能がどれだけ持続するか、また、脱着など、再生した場合に初期能力がどの程度まで回復するか、再生コストはいくらになるか等のデータが必要です。しかし、これらの数値は使用条件によっても大きく変わりますから、VOC処理装置の一般的な評価は非常に困難です。

表2.5.2.1の上記以外の製品は本体価格が600万円以上になりますが、触媒燃焼法を採用し、主に印刷分野の排気処理などに利用されているものです。一般に、印刷の排気量は塗装より小さく、装置も小型になります。

塗装分野のVOC対策は、法律で規制されている大規模施設を除けば、VOC処理装置ではなく、工程改善や塗料の変更などで行われています。もちろん、工程改善などをした上で更にVOC処理装置を設置することが最大のVOC削減効果を発揮します。


5.2.2 中規模の処理装置

塗装工場の排気ガス処理などに使用するには、風量10,000 m³/h以上に対応したVOC処理装置が必要です。代表的な処理方法である直接燃焼法、蓄熱燃焼法、触媒燃焼法、吸着法、TPS法(温度・圧力スイング法:温度と圧力を変えてVOCを凝集させる方法)の装置について、その例を表2.5.2.2に挙げます。また、性能データが明らかな表2.5.2.1に記載された装置のいくつかも、参考のために加えました。ただし、データ取得の時期が異なっていますし、電話での口頭による回答も含まれていますので、正確な値は各社に問い合わせてください。企業が公表している数値は、「VOC排出削減支援ツール」1)を参照してください。「VOC排出削減支援ツール」は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託により開発され、VOC削減技術に関する情報を集めてインターネット上に公開したものです。開発担当は(株)三菱化学テクノリサーチ、(株)三菱総合研究所、みずほ情報総研(株)、(独)産業技術総合研究所の4社で、開発研究の統括は東京大学生産技術研究所が行ったものです。「VOC排出削減支援ツール」に記載されたVOC処理装置は2011年3月21日時点で74件です。

また、「VOC排出削減支援ツール」に載っている処理装置の初期コスト及び運転コストを処理風量を横軸にとって整理したグラフが基礎編2.5「処理装置導入のコスト」に記載されています。

表2.5.2.2 市販処理装置の例 その1(各社HP及び環境省ガイドなどを参考)

*性能試験は、環境省VOC脱臭処理技術評価ガイドの数値

表2.5.2.2 市販処理装置の例 その2(各社HP及び環境省ガイドなどを参考)

*性能試験は、環境省VOC脱臭処理技術評価ガイドの数値


5.2.3 脱臭装置

大気汚染防止法で規制されている大規模塗装工場などでは、塗装ブースからのVOCと乾燥炉等からの悪臭を同じVOC処理装置で分解して処理しています。しかし、塗装ブースからの排気は風量が大きいので、工場全体のVOC処理装置を設置するコストは非常に高額になり、容易には導入できません。一方、特に住宅に隣接する都市の中小工場などでは、悪臭対策が焦眉の課題になっていて、「まず、脱臭」というニーズが強くあります。

公益社団法人におい・かおり環境協会(http://www.orea.or.jp/)は、脱臭の問題にも力を入れて取り組んでいます。「脱臭ナビ-ひと目でわかる脱臭装置選択ガイド-」(http://www.dashdb.jp/)を公開し、市販の脱臭装置の仕様と評価を公開しています。評価項目は、経済性、省スペース、脱臭性能、信頼性、維持管理です。「脱臭ナビ」では脱臭装置を用途で分類していますが、「塗装」という分類はなく、塗装工場で使用可能な装置は多くはありません。しかし、塗装の場合も脱臭を考える上で貴重な情報が得られます。

塗装工場で、使用されている脱臭に特化した処理装置例を紹介します。アルデヒドなどの悪臭原因物質を捕捉する目的で、水のシャワーを使用した脱臭装置です。パックトベッド(空気と水の接触面積を増やすための詰物です)と消臭液を使用した脱臭装置を乾燥炉の排気に使用したときの性能を図2.5.2.1に示します。

臭気濃度(臭気指数) 全炭化水素
入口 410(26) 130ppmC
出口 170(22) 110ppmC
処理効率 59% 15%

図2.5.2.1 水洗方式の塗装工場脱臭装置(消臭液の噴霧)

この装置は東京都内の塗装工場に設置されたもので、消臭液に年間200万円以上使用したとのことでした。運転経費としては、その他にも電気や廃水処理の費用がかります。処理効率をみると臭気は減少していますが、全炭化水素の処理については効果が少ないことが分かります。

都市部の塗装工場では、おが屑を詰めて水や消臭液を噴霧し、脱臭とミスト除去をする装置など、それぞれ工夫した様々な装置が使用されています。


5.2.4 濃縮装置

VOC濃縮装置をつければ、処理風量を1/5~1/20に減少させることができます。濃縮装置として、ゼオライトや繊維状活性炭を使用した濃縮機が現在は製造・販売されています。吸着材としてゼオライトを使用し、VOCを円盤の一端で吸着させ、吸着したVOCを反対側で脱着する回転方式の濃縮装置、株式会社西部技研の型式UZU-2950V40の原理と写真を図2.5.2.2に示します。図の右側の写真は風量が33,000 m³/h(工業用吹き付け塗装ブースで約3台分)に使用可能です。加熱脱着後の排気は高温になります。

図2.5.2.2 ゼオライトを使用したVOC濃縮装置の原理と製品例
(転載:株式会社西部技研、「VOC濃縮装置」型式UZU-2950V40、風量33,000 m³/hr、対象VOCはIPA、アセトンなど、http://seibu-giken.co.jp/sky_save_c/index.html、2011/6/6確認)

また、繊維状活性炭を濃縮用吸着材に使用した大氣社の装置例(アドマットC型)を図1.5.2.3に示します(繊維状活性炭は、細孔中の大部分をマイクロ孔が占めており、粒状活性炭などと比較すると脱着時のVOC残留が少ないとされています)。アドマットC型の吸着体は、繊維状活性炭をフェルト状に加工したマットを使用しています。このマットを円筒状の金網に巻き、カセットにして、ローターに取り付け、ローターは回転しながら、吸着・脱着を連続的に行います。吸着は、未処理ガスがカセットの外側から内側に通過するときに行われ、脱着はカセットの内側から外側に向かって、約130℃の熱風を通過させることによって行われます。吸着から脱着への変換は、カセットがローターの最上部に来たときに行われます。

図2.5.2.3 活性炭を使用したVOC濃縮装置の原理と製品例
(転載:大気社、「アドマットシステム VOC処理・悪臭防止システム」、http://www.taikisha.co.jp/business/voc/adomat.html、2010年12月12日確認)

本装置の処理効率は、処理ガスの種類、濃度により異なります。対象物質として、塗料・インキ用シンナー、アルコール、有機溶剤などが挙げられています。

引用文献

  1. (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、「VOC排出削減支援ツール」、http://www.voc-info.jp、2011/6/3休止中
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