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2 塗装編
第5章 塗装工場用VOC処理装置

5.3 ランニングコスト

5.3.1 直接燃焼方式

大規模な塗装工場で実績の多い直接燃焼方式は、VOCの種類によらず安定した処理が可能です。触媒燃焼方式における触媒の被毒、あるいは蓄熱燃焼方式における蓄熱体の目詰まりなどがありません。ただし、低濃度VOCでは、VOCの発熱量が不足で、灯油やLNG(液化天然ガス)などの補助燃料が必要です。装置により、熱回収が工夫されていますが、それでも運転コストは高額になります。

補助燃料コスト

直接燃焼法の運転経費について参考文献の試算結果を引用します(表2.5.3.1 参照)。塗装ブース1台からの排気風量に相当する10,000 m³/hを処理する運転経費は、蒸気で熱回収をした利益を差し引いた年間評価換算値で約9,000万円/年です。補助燃料の費用8,680万円/年が大きな割合を占めています。また、表2.5.3.1の値は、灯油価格が35円/Lで計算されていますが、その後に灯油価格は50~60円/L 程度に上昇しています。

表2.5.3.1 直接燃焼法による処理装置の運転経費の試算例
(引用:経済産業省, (社)産業環境管理協会:「有害大気汚染物質対策の経済性評価報告書」, 2003年2月)
区分 2,000Nm³/h 5,000Nm³/h 10,000Nm³/h 30,000Nm³/h
必要量 年間費 必要量 年間費 必要量 年間費 必要量 年間費
試算条件
  • 設備の原価償却は対象外と設定
  • 設備起動時、異常時、停止時には運転員が関与するが、通常運転時は夜間も含めて事業所の総合的な設備安全監視の一環にて対応できる事から、運転要員費は対象外と設定
  • 運転経費試算対象は用役及び年間当りの補修費と設定
  • 蓄熱方式と同様に直接燃焼式焼却設備も連続稼動されるケースが多い事を考慮し稼動率は以下を設定
    稼動率 24 時間/日×30 日/月×11 ヶ月/年=約8,000 時間/年
  • 用役単価は以下を設定
    補助燃料(灯油): 35円/L、ボイラー給水(BFW: Boiler Feed Water):170円/m³、電力:15円/kWh
    圧縮空気:10円/m³
  • 回収蒸気(4 円/kg)は回収量として表示し、年間用役費に加算しない扱いとした
  • 年間補修費はボイラーの定期検査及び通常補修費合計として設備建設費の1.5%と設定
  • 排ガスの2 次処理、ブロー水、排水の処理は対象外と設定
補助燃料 [L/h] 65 1,820 160 4,480 310 8,680 930 26,040
電力 [kWh] 13 156 30 360 60 720 180 2,160
BFW [m³/h] 0.6 82 1.5 204 3.0 408 8.9 1,210
圧縮空気 [Nm³/h] 25 200 55 440 105 840 300 2,400
年間用役費 [万円] 2,258 5,484 10,648 31,810
年間補修費 [万円] 160 210 280 460
年間運転費 [万円] 2,418 5,694 10,928 32,270
蒸気量 [kg/h] 575 1,430 2,830 8,450
年間評価換算[万円] 1,840 4,576 9,056 27,040

上記の例で風量10,000 m³/hを処理する場合、補助燃料として燃やす灯油310 L/hの年間CO2排出量を計算しました。灯油の平均比重を0.7945 kg/L、体積当たり平均高位発熱量を36.6 MJ/L、CO2発生量68.5 gCO2/MJとすると、年間8,000時間の運転で約6,200トンのCO2を発生することになります。非常に大量のCO2を排出することになるので、VOCを削減するメリットとCO2を増加させるデメリットを総合的に検討する必要があります。

直接燃焼法の新しい装置の例として、処理風量は1台当たり2,400 m³/h というE社のマイクロガスタービン方式の直接燃焼装置があります。この装置は、処理風量は塗装ブース1台の排気量の約1/4ですが、並列運転が可能とのことです。運転コストに関しては、メーカに問い合わせたところ、風量2,400 m³/hを処理する場合、29.4 m³/hの都市ガス13Aを補助燃料として使用します(低濃度で自燃しないVOCの場合です)。都市ガスの価格は季節と使用量により大きく変動しますが、工業用大口として80円/m³で計算すると2,350円/hになります。風量 10,000 m³/hでは9,790円/hが必要です。年間8,000時間の運転をすると約7,800万円の燃料費になり、表1.5.3.1に示した従来からの直接燃焼方式よりかなり安価になります。

一般的に、空気の温度を上昇させるときのエネルギー量と費用は次の数値を使用して概略を見積もることが出来ます。都市ガス(東京などで使用されている13A)を例に計算します。

計算に使用する定数
注1:乾燥空気1気圧0℃において、定圧比熱は1.007 kJ(kg K)、密度は1.293 kg/m³です。比熱は温度により変化しますが、近似値として一般的にこの数値を使用しています。
空気の比熱 : 1.3 kJ/(m³K)又は0.32 kcal/(m³K)注1
都市ガスの発熱量: 45 MJ/m³又は11,000 kcal/m³
都市ガスの価格: 80円/m³ (2011年2月:東京ガスの一般料金145~102円/m³、業務・工業用選択約款3料金77~88円/m³)
都市ガスのCO2発生量: 2.28 kg/m³
計算の条件
昇温度: 100℃
処理風量: 10 m³/min(600 m³/h)の場合
計算方法と計算結果
注2:有効数字は空気の比熱に合わせて2桁です
エネルギー量: 78 MJ(=処理風量600 m³/h×空気の比熱1.3 kJ/(m³K)×昇温度100K)
都市ガス量: 1.73 m³(=エネルギー78 MJ/発熱量45 MJ/m³)注2
都市ガス料金: 139円(=都市ガス量1.73 m³×価格80 円/m³)注2
発生するCO2量: 3.94 kg(都市ガス量1.73 m³×都市ガスのCO2発生量2.28 kg/m³)注2

なお、ここで計算した値は、純粋に空気の温度を上げるためだけの数値です。実際は、装置外壁からの放熱、熱交換器によるエネルギーの回収などを考慮する必要があります。また、VOCを燃焼させる温度と排ガス温度との差である昇温度や風量については、実際の数値を用いる必要があります。


5.3.2 蓄熱式燃焼法

蓄熱式燃焼方式は、熱回収効率が80~95%とされており、運転経費の削減が可能です。以下にロータリー式蓄熱燃焼装置の運転における助燃費用例を示します。

運転条件
処理風量: 155 m³/min (9,600 m³/h)
運転温度: 870℃、外気温度20℃
温度効率: 90%
VOC: トルエン(自燃なし、自燃は700ppm以上)
補助燃料: LNG(11,000 kcal/m³)
処理運転時
必要熱量: 334,600 kcal/h
LNG消費量: 30.4 m³/h LNG価格を65円/m³とすると約2,000円/h

直接燃焼法と同様に年8,000時間運転すると、経費は1,600万円/年で、補助燃料代は、直接燃焼法の前機種と比較して1/5になります。装置本体の価格は約6,500万円でした。装置設置費用や前処理装置などの価格は含んでいません。


5.3.3 吸着方式

交換式活性炭吸着塔は、安いイニシャルコストで大風量を処理することができます。東京都立産業技術研究センターが購入した10,000 m³/hの処理が可能な北炭化成工業株式会社の装置が約600万円でした。活性炭はトン規模で購入すると300~800円/kg(2009年7月調査)です。そして、VOCの種類にもよりますが、吸脱着を繰り返して使用する場合の吸着量は、活性炭の重さの10~20%程度です(基礎編「表1.2.3.1VOCおよび悪臭物質の活性炭による吸着保持量」)。また、活性炭は使い捨てではなくて再生して繰り返し使用して、性能が落ちてきたら再賦活や交換をします。再生は通常は専門の業者に委託し行われますが、その料金はVOCの種類と量、及び場所(運賃)などによって異なり、汎用的な料金は見積もることができません。北炭化成工業の装置の場合は、風量400 m³/min(24,000 m³/h)で活性炭の再生などの処理装置運転コストが約120万円/月とのことでした。

株式会社モリカワでは、新しい活性炭吸着方式のリサイクル方法を研究しています。設備のイニシャルコストが安いVOC処理サービスを提供するとのことです。

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