東京都地域結集型研究開発プログラムのタイトル図

序文


VOC(揮発性有機化合物)は大気中で浮遊粒子状物質(SPM)や光化学オキシダントの原因となります。平成16年に改正された大気汚染防止法では、平成22年度までに工場等の固定発生源からのVOC排出総量を平成12年度比で3割程度削減することを目標としました。その結果、平成20年度のVOC排出量は平成12年度の35%減となり、改正大気汚染防止法の目標は達成されたといえます。

しかし現実には、光化学オキシダントの濃度は漸増し、VOC削減の真の目的は達成されていない状況です。今後も光化学オキシダントの発生を減らすため、更なるVOC排出対策が必要といえます。また、VOCは悪臭物質や発がん性等の健康へ悪影響のある物質を含みます。そのため、単純にVOCの排出量が減ったからといってVOCによる種々の問題が解決されたとは限りません。例えばVOCを処理することにより、臭気や健康影響の強いVOCが副生したり、その他の生成物が発生したりすることもあります。VOC排出施設の近隣で悪臭の問題が起きないように、また近隣住民やVOCを取り扱う作業者の健康を守るために、引き続きVOC排出対策が必要です。

それでは、今後どのようにVOC排出対策を行っていけばよいのでしょうか?東京都地域結集型研究開発プログラムでは、これからのVOC排出対策について検討し、「VOC排出対策ガイド-基礎から実践・評価法まで-」を作成しました。このVOC排出対策ガイドは、「環境にやさしいVOC排出対策」を知るための手引書です。そのコンセプトを図1に示します。

図1 VOC排出対策ガイドのコンセプト

これまでは一般に処理技術はVOCの処理効率(どれだけ減ったか)により評価されてきました。一方、このVOC排出対策ガイドでは、処理により二次生成する物質も測定し、排出ガスの環境への影響(粒子生成能、オゾン生成能、悪臭、健康影響など)を評価する方法についても取り上げています。更に、処理技術を導入する際に、消費エネルギー、技術導入コスト、製品の品質維持などのバランスをどのようにとるか、についてもまとめています。排出しているVOCの環境への影響や排出対策によりどのくらい環境影響を低減できるかを知り、そして、コストとの比較により、より効率的なVOC排出対策を選択するガイドとなるように作成されています。

VOC排出対策ガイドは、基礎編と塗装編からなります。基礎編では、VOCに関する基礎情報のほか、VOC処理技術、VOC排出対策の評価方法(測定方法、影響評価方法、処理技術導入による環境影響低減の評価方法)、そして、具体的な削減への取組方法を記載しています。塗装編では、VOCの排出量の多くを占める塗装現場の排出対策についてまとめています。工場内塗装におけるVOC排出の実態や臭気、環境への影響などの基礎情報と、工程改善によるVOC削減手法やVOC処理装置について述べています。また、東京都地域結集型研究開発プログラムで開発された最新の処理技術も紹介しています。

このガイドは、幅広い分野の内容を網羅しています。そのため、事業者の方々がVOC排出対策を行うための情報源としてはもちろん、VOC排出対策に係る行政担当者の方、研究者の方等、多くの方々にご利用いただけるように作成しました。

今後、多くの方々のご要望・ご意見を取り入れ、このVOC排出対策ガイドを、更に分かりやすく、より実用的なガイドとして完成させたいと考えております。皆様のご意見・ご要望・ご感想を募集しています。HP上にある「ご意見募集フォーム」からご投稿いただけます。たくさんのご意見お待ちしております。

なお、本ガイドは、東京都地域結集型研究開発プログラムの「環境評価分科会」で作成しました。

「環境評価技術分科会」メンバー一覧

リーダー 柳沢 幸雄 (東京大学)

メンバー[50音順]
井川 誠司 (柴田科学(株))
伊瀬 洋昭 (東京都立産業技術研究センター)
井上 潤 (東京都立産業技術研究センター)
上野 広行 (東京都環境科学研究所)
岸 敦夫 (JSTイノベーションサテライト茨城)
木下 健司 (東京都立産業技術研究センター)
木下 稔夫 (東京都立産業技術研究センター)
熊田 英峰 (東京薬科大学)
月精 智子 (東京都立産業技術研究センター)
小坂 幸夫 (東京都立産業技術研究センター)
小島 正行 (東京都立産業技術研究センター)
篠田 勉 (東京都立産業技術研究センター)
杉森 博和 (東京都立産業技術研究センター)
関口 知恵 (東京都立産業技術研究センター)
野口 美由貴 (東京大学)
平野 康之 (東京都立産業技術研究センター)
藤原 哲之 (東京都立産業技術研究センター)
水越 厚史 (東京都立産業技術研究センター)
横田 久司 (東京都環境科学研究所)
吉田 裕道 (東京都立産業技術研究センター)
Copyright (C) 2006-2011 Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute All rights reserved.